NOTE 2011

2011年4月

花粉症 2011/4/25

花粉症  花粉症の原因となる植物は沢山あります。春であれば杉・ヒノキ・桃・梅・桜などなど。
花粉症に対する鍼灸治療は得意とするところですが、5年、10年と長くなれば長くなるほど
その分治療も大変になってきます。
長く患っている方は複数の花粉にアレルギーを持っているからです。中には1年中症状が続く
という方もいらっしゃいます。このような場合は特に改善するのに時間がかかってしまいます。

 春に治療して治まっていたのに夏や秋にまた症状が出現するということがあります。
症状が出ているときが一番治療しやすいため、イネやブタクサの花粉症を症状が出る前の季節に 治療するというのが難しいからです。
花粉症で来院される方は症状の出始めが良いと思います。

ページの目次へ|

2011年5月

たけのこ 2011/5/6

薬膳/たけのこ  山菜の季節となりました。山菜は冬の間に溜まった毒を体から出してくれる働きがあるといわれています。
なにも毒は冬に溜まるというわけではないのですが、旬の山菜の方が圧倒的に解毒効果が高いため、そのように言われるようになったのかもしれません。
体に悪い毒といっても様々な種類があり、山菜でも解毒する対象が異なるようです。

 最近はデットックスという表現もされ、さも解毒は癒しのような体が楽になるイメージがありますが、実際の食品による解毒は痛みを伴うことは少なくありません。
特に「たけのこ」は解毒する力が強いのか食べた翌日ぐらいに原因不明の肩・腰・下肢など様々なところが痛む場合があります。
消化の悪いたけのこを食べ過ぎての腹痛とは違います。

 自然治癒が働いてからだを治そうとしているときは、大なり小なり痛みが伴うものなのです。
山菜による解毒も同じなのです。しかし、効能をなるべく消さずこのような不快な症状が起きないようにするのが「薬膳」と言えるのかもしれません。
昆布と筍、あるいはわかめと筍の組み合わせはおいしいのですが、煮物の場合豚肉との組み合わせだと不快な症状が抑えられるようです。
たけのこ御飯の場合は薄揚げを入れたほうがやはり良いようです。

東洋医学 2011/5/11

 東洋医学が好きだ、あるいは興味があると言われる方がいらっしゃいます。しかし、そのような方でも東洋医学に対し誤った理解をしていることが多いのです。
たとえば、漢方薬についても、「漢方薬は副作用がない」「漢方薬は長く飲まなければ効果が出ない」と思っていらっしゃる方がいます。
古代中国で沢山の処方を残した名医・張仲景はチフスなどの感染症で苦しむ人のために処方しました。 「何ヶ月も飲み続けないと良くなりません」なんて言っていたらみんな死んでしまいます。
本来漢方薬も即効性のあるものだと思います。私は風邪の引きかけに、家にある漢方薬のなかで、その時に一番合った漢方薬を選んで飲みます。
そのおかげで鍼灸師になってから風邪らしい風邪を引いたことがありません。但し、そんな風邪気味の時に葛根湯を選んだことは一度もありません。
ウイルスも変化を続けているのだと思います。

東洋医学/氣  鍼灸でも「痛いところに鍼を打つ」「お灸は熱くないと効果がない」と思っている方が未だにいらっしゃいます。
悲しい気分になりますが、仕方がありません。もっと東洋医学を理解してもらえるように努力しなくてはならないのだと思います。
鍼灸が全て東洋医学だと思われていると思いますが、古代中国で生まれた鍼という道具を用いて現代医学的な施術をされている方も非常に多いのです。
東洋医学で抜かすことのできないものが「気」です。古代中国で一人の患者にぴたりと合った薬を処方したり、患者のその瞬間に合ったツボを見つけて鍼をするというためには「気」は絶対に必要な概念です。
この掴みどころのない「気」を分ってもらうのが東洋医学を説明するとき一番難しいところです。
「気」なんて信じてない、という方もいらっしゃいます。でも、心配ありません。信じてなくても鍼は効きます。

ダイエット鍼 2011/5/20

 以前は鍼灸院でもダイエットというと耳鍼ダイエットがほとんどでしたが、最近はダイエット鍼という表現も多くなりました。耳以外のからだのツボに鍼や灸を行うことによって、内臓の働きを良くしたり、そのほか自律神経・内分泌系・免疫系の調整をするのだと思います。

 当院でもダイエット鍼を行っていますが、まずは肝・膵・大腸などを健康にすることと、内臓の自律神経の働きを良くする事を第一に行います。そこを改善しない限り太りやすい状態は変わらないのでリバウンドも起こしやすいということになってしまうのです。
鍼をする場所としては下肢や腰が多いのですが、やはり脂肪が付いているお腹に沢山刺してほしいという方がいらっしゃいます。痛いところに鍼をしてほしいという気持ちと同じなのでしょうが、それが効果的とは限らないのです。

 ところで、今年の夏の気温はどうなるかは分りませんが、省エネとしてエアコンの使用を控えたり、設定温度高めをキープということは例年よりも厳しく求められるでしょう。
高齢者の熱中症も心配ですが、メタボリックな方の心臓への負荷も気になるところです。
ダイエットが一番のクールビズという方もいらっしゃるとは思いますが、無理なダイエットは健康を害することが多いものです。安全な方法で焦らずに継続することが大切です。

びわ 2011/5/27

 先日実家から届いた荷物の中にびわの実が入っていました。びわというのは鍼灸と少しだけ関係があることを思い出しました。
 日本には昔から「枇杷の葉灸」というものがあります。枇杷の葉をからだに当てその上からお灸をします。民間療法的なものの中には効果のないものも多いのですが、この枇杷の葉灸はそれなりに効果があると思います。
中でも癌に効果があるといわれ、一度「枇杷の葉灸をやっていますか」という問い合わせもありました。生の枇杷の葉を手に入れることは難しいため本当の枇杷の葉灸を行っている治療院はほとんどないと思いますが、現代では枇杷の葉を混ぜた棒灸やエキスを混ぜたクリームを使っているところはあると思います。

薬膳/不妊
びわゼリー

 もうひとつのびわの効能はびわの実にあります。
 植物は漢方薬・薬膳など薬の材料ですが、ターゲットとなる臓器があるような気がします。たとえば、ブルーベリーは視力が良くなるというのは、目の部分に作用するということだと考えられます。
びわの実の場合は産婦人科系の臓器に効果があると思います。具体的には月経不順や不妊症が良くなるように働きます。生ほどではありませんがシロップ漬けでも同じくらいの効果が得られると思われるので、女性の方は時々びわゼリーなどを食べてみても良いのではないでしょうか。
 シロップ漬けの果物の中には健康に良くないものも多いのですが、びわはそのような変化も起こさないようなので安心して食べられると思います。

2011年6月

神農さま 2011/6/1

 東洋医学の歴史を学ぶときに一番最初に登場する人物は神農(しんのう)という皇帝です。伝説では神農の内臓は外から透けて見えたため、食べたものに毒があれば内臓が黒くなり、作用する部位や毒の有無を知ることができたといいます。
そのようにして神農は百草を嘗めて効能を確かめ、諸人に医療と農耕の術を教えました。最終的には多くの毒草を口にしたことにより毒素が体に溜まり亡くなったということです。

神農
神農さまの人形

 どこの国でも何が食べられるのかが明らかになるまでに多くの人が命を落とすことがあったと思います。それでも古代には現代人とは違う能力の持ち主がいたのではないでしょうか。
 人間も動物であり、具合の悪いときに何を口にすべきかが判る人がいたかもしれませんし、体が透明な人はいなくても体を透視することができる仙人のような人がいたかもしれません。神農が実在の人物であったとするなら、少なくとも食べたものがどこに作用しているかが体の感覚でわかる能力はあったに違いないと思います。
 現代の漢方薬の見立てや薬膳のレシピは理屈重視で自分の感覚で判るという人はほとんどいないのでしょう。神農さまに現代の漢方薬と薬膳を是非口にしてもらいたいものです。

飲料水の安全基準 2011/6/9

 今週天然水のウオーターサーバーを入れました。 震災後、安全な水の確保が困難な方々のことを考えると贅沢な気がして控えていましたが、暑い季節となりとうとう入れることにしました。

 今問題になっているのは放射能汚染ですが、今回のことで、人が決めた「安全の基準」なんて、安全とは言えないということがはっきりしました。

オアシスの天然水
ウオーターサーバー

 住むところが変わってなじめないときに「どうも水が合わない」などと表現することがあります。 これは気持ちの問題だけではなく、本当に自分に合わない「水」というものがあるのです。
 水が症状の原因と思われる反応を感じる患者さんが何人もいらっしゃいます。 ほとんどはある地域に住んでおられる方、住んでおられた方です。 私としてはその地域の水道水が関係しているとしか考えられません。
 しかし、その方々の症状は同じではなく多様です。 病院へ行っても病名が付かない方も多いです。腹痛や下痢のような症状ではないので病原微生物でもなく、煮沸しても意味はありません。
 家族であっても症状が出る人もいれば、なんともない人もいます。 体質ということも考えられますが、一人ひとりの安全の基準が違うということが関係しているのではないでしょうか。
当然低い数値に合わせるべきなのでしょうが、放射能汚染と違い今後もそれほどの基準の変化は期待できないと思います。

 体に良いと信じて名水と言われる湧き水を汲みに行き、薬は必ずその水で飲むという方がおられました。 その水が逆に体を悪くしていたのです。
 今は放射能の問題があり湧き水を飲むという方はいらっしゃらないと思いますが、湧き水などは名水と言えども現地へ行った時に少し飲む程度で良いと思います。

 私はお客様用に水を買うことにしましたが、なにもウオーターサーバーを勧めているわけではありません。 売られているミネラルウオーターが合わないという可能性もあるのですから。
 一言に飲料水といっても全国どこでも同じ条件の水が蛇口から出てくるわけではありません。 引っ越してから体調がすぐれない方は飲料水も原因の可能性として考えてみても良いかもしれません。

免疫力を高める 2011/6/16

 鍼灸院というところには病院で異常なしと言われた方から、難病で特に治療法がないといわれた人、癌の術後で再発を心配しておられる方、様々な科の様々な健康段階の方が来られます。症状の原因や要因は人それぞれなのですが、共通して重要だと思われることは免疫力を高める必要があるということです。

 がんになった方の免疫を高める方法として「笑い療法」「生きがい療法」などがあります。これはキラー細胞が神経伝達物質のレセプターを持っているからという説がありますが、私は胸腺にダイレクトに働きかけているのではないかと考えています。
 免疫の重要な器官である「胸腺」は思春期がピークでその後は萎縮して脂肪組織に変わっていきます。思春期をとうに過ぎて脂肪化してしまっている胸腺に何か効果があるのかと思われるかもしれませんが、胸腺と同じ様な働きをする組織が胸部を中心に分布しているという話があります。実際アレルギーなどの鍼灸治療を行うとき、患部とは別に左胸部や左上腕部に反応が現れます。そこも改善しないとアレルギーは良くなっていきません。
大きな病気をしてからではなく若いときから、胸腺の老化を遅らせ胸腺様組織を健康に保つ生活ができると良いと思います。

 「笑い」や「生きがい」よりも胸腺組織の力を高めると私が信じていることがあります。それは「せつない」という感情です。
 恐怖心で腰が抜けるということがあるように、感情とからだは繋がっています。証拠となるものはありませんが「せつない」は胸腺組織と繋がっていると思います。
子ども向けTV番組で流されていた「せつないのうた」、その中で子どもたちに”せつないってなんだ・・・さびしいと違うその気持ち””これからいっぱいやってくる。やってくるんだせつないが”と語りかけています。
病気になってから、歳がいってからでは遅いこともあります。若いうちに免疫力の貯金をしておくことは大切なことなんです。

うざく 2011/6/23

 土用の丑の日にうなぎを食べるというのは、うなぎ屋の宣伝として平賀源内が考えたというのは有名な話です。バレンタインデーのチョコレートのようなものですね。
 うなぎは栄養価の高い食材ではあるのですが、夏ばて予防に良いというわけではありません。しかし、調理を少し工夫すると夏ばて改善の薬膳になるのです。

薬膳/うざく
うざく

 普段は足がむくむということがないのに、梅雨から夏にかけての蒸し暑い時期にむくみがひどいという方はいませんか。年齢が進むにつれ筋肉や血管が硬くなり水がたまりやすい体質になってきます。その上梅雨になると外気の湿度が高く、皮膚から水分の蒸発が極端に減ってしまうためむくんでしまいます。
 このような季節の下肢のむくみや体のだるさに「うざく」が良いのです。とは言っても治療ということではなく一時的な症状軽減であり、長く効くというものではありませんが、同じうなぎを食べるなら少しでも効果のある方がいいと思います。 うなぎの蒲焼と酢の組み合わせに効果があるので、その他の具材はきゅうりでもなんでもかまいません。でもうなぎは白焼ではなく蒲焼でないとだめなんです。

 もう1つ、うなぎの薬膳として「う巻き」があります。同じくうなぎの蒲焼を芯にして卵焼きにしたものです。これは小・中学生ぐらいの子どもたちの記憶力の発達を助けてくれます。成人・老人に効果がないのは残念ですが、学生のお弁当や夜食にちょうど良いかもしれません。
 どんな食材でも体に合わないということはあります。子どもが嫌いな食べ物はからだに合ってない可能性もあります。嫌いなものや食べたくないときに無理に食べさせたり、食べたりするのは危険かもしれません。

肌のゴールデンシーズン 2011/6/30

 肌のゴールデンタイムというものがあります。夜の10時~2時。成長ホルモンが分泌される時間帯だそうです。 確かに寝る子は育つ。高身長の人に聞くと成長期は一晩寝る毎に背が伸びる感じで、痛みもあるらしいですね。  体が大きくなるときは皮膚も広がらなくてはいけないので肌も成長ホルモンによって成長するようになっているのですね。

美容鍼/ターンオーバー 1年間の中で身長が最も伸びる季節は夏だそうですが、成長ホルモンのピークはもう少し早い時期と聞いたことがあります。いずれにしても暖かい季節に成長ホルモンが分泌されやすいようです。 肌もこの時期成長ホルモンに刺激されターンオーバーが活発になり肌が生まれ変わっていきます。

 しかし、美容においては表皮(ターンオーバーする部分)よりも真皮の部分がより重要です。この真皮にはコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などがあり、肌のハリ・弾力・水分保持を作ります。 真皮の構成成分の多くは線維芽細胞によって作られます。線維芽細胞の産生能は加齢と共に低下していきますが、まったく産生しなくなるということではありません。また、年間を通してみると5・6月と9・10月はそれ以外のときよりも産生量が高いように患者さんを診ていて感じています。

 美顔鍼をいつから始めるのが良いかと訊かれることがありますが、私はいつも5月と答えています。冬は肌の血行も良くないですし、コラーゲン産生のことを考えれば、春と秋が美容鍼のゴールデンシーズンです。

2011年7月

暑気払い 2011/7/7

 古代中国では気候の変化(六気;風、寒、暑、湿、燥、火)が人体に害を与えて病の原因となった場合を「邪」とよびます。梅雨のむくみは湿邪が、夏の熱中症は暑邪が原因ということになります。実に便利な表現です。
 気象・気候と生物体との関係を研究する学問を「生気象学」といいます。日本でも近年は花粉症や熱中症を意識した天気予報がなされていますが、EUの国では何十年も前から医学天気予報があったようです。日本は随分遅れている印象です。

 もともと「暑気払い」というのは、酒や薬を飲んで暑さを静めて暑邪に侵されないようにするという予防医学だったのでしょう。ところが今では冷たいビールを飲んで、かえって消化機能を低下させ、ますます体がだるくなるという悪循環です。また、昔は体を冷やす飲み物として枇杷の葉茶を好んで飲んでいたようですが、これも体に良いようには思えませんのでやめたほうが良いと思います。
 暑気から暑邪へ変身する鍵は私が考えるに「回復しづらい疲労」だと思います。 夏の疲労が回復しづらい原因は酵素が熱に弱く十分な働きができていないからではないかと推測しています。

薬膳/芋羊かん
芋ようかん

 実は、酵素が十分でなくても疲労回復を助けてくれるものがあります。それがお酒です。(でもビールやチューハイのように冷たいものは夏には逆効果です。)暑気払いに適度にアルコールを飲むというのは実は理にかなっているのだと思います。
 しかし、アルコールがからだに合う人ばかりではありませんし、飲みすぎれば脱水や熱中症も逆に起こしやすい。 アルコール以外で暑気払いに良いのは麦茶に芋ようかんです。ご自分で作ってみたい方はクックパッドのレシピを参考に。寒天を使うと効能は無くなります。
Cpicon 芋ようかん 舟和に迫る!? by まま蔵

冷奴 2011/7/14

 治りにくい病気、いわゆる癌や難病などの原因は、突き詰めていくと遺伝子の問題ということになります。地球で普通に生活しているだけで、毎日紫外線・宇宙線・微生物などによって遺伝子は沢山の傷を受けます。従って遺伝子を傷つける原因を取り除くことより、遺伝子を修復してくれるたんぱく質を正しく働けるように維持することが重要のようです。

 今回のテーマは冷奴ですが、主役の豆腐、未だに健康食品と思っていますか?以前は間違いなく健康食品でした。本来の豆腐は優秀な食品で癌の発生を抑えてくれる可能性があります。他の大豆製品よりその効果は高いと思います。

薬膳/冷奴
豆腐のお刺身

 しかし、最近はスーパーへ行っても安心して買える豆腐が少ないので困ってしまいます。それは遺伝子組み合え大豆が問題ではありません。今使われている遺伝子組み換え大豆は心配ないと感じています。
 問題は凝固材です。昔ながらのにがりは問題ないのですが、最近は簡単に豆腐をきれいに作れる「乳化にがり」が使われている豆腐が増えてしまいました。表示を見ても消費者は区別が付きません。
 日本各地に昔ながらの豆腐があると思います。石川県にも堅豆腐というものがあります。味だけでなく体に良いという意味でもトップクラスだと思います。
 堅豆腐は文字通り堅いので、薄くスライスしてお刺身にすると夏の晩酌にちょうど良いです。豆腐の修復能力をより高めた薬膳にするなら、とうもろこし(冷凍以外)と黒きくらげ、それに生のショウガをトッピングすると良いでしょう。これだけで効果はあるのですが、胃もたれのような副作用が出る方もいると思うのでさらに白髪ネギを加えると大丈夫。

 この薬膳は具体的な症状を改善するということではないのですが、健康・美容・若返りなど、からだのあらゆることの根本を改善してくれる可能性があるので、健康だと思っている方も年に1度は是非食べて頂きたいと思います。

病膏肓に入る 2011/7/21

 もう治せない状態になった場合を「病膏肓に入る(やまいこうこうにいる)」といいます。
これは中国の「春秋左氏伝」からきている故事です。

 春秋時代、晋では景公という人が即位していました。彼が司法大臣に任命した屠岸賈は、名門趙一族に無実の罪をなすりつけて殺しました。その後、数十年が過ぎた頃、趙の先祖はこの事件を長く放置した景公を祟り病にしました。 景公は名医を呼び寄せて診察してもらいますが「残念ながら、手遅れです。病は、膏(心臓の下の部分)の下、肓(横隔膜)の上に入っております。ここでは、針は届かず、薬も効きません。」と告げました。景公は前日の夢と同じであったので名医とほめました。しかし、その後病は回復します。病は良くならないと言っていた巫女を処刑した直後、体調が急変しトイレに落ちて亡くなります。

温灸/魄戸・膏肓 通常の病は自然治癒力により元の状態に向かって回復していきます。自然治癒力が十分でない場合は治療がそれを助けます。しかし、それらがいずれも効果がないとなれば、重篤なものは死に至り、そうでなければそれは老化もしくは障害ということだと思います。
 患者さんを鍼灸治療していて、『病膏肓に入る』の状態だと思うことは時々あります。早い時期に対処すればなんでもないことであったのに、それを長年放置したことによって老化や障害の様相をしていて、もはや普通の治療では回復ができない状態になっています。 病が肉体レベルよりも深くなり、魄(ハク)まで傷つけてしまった状態ではないかと考えています。

 このような場合、早く治療にかかれば良かった訳なのですが、過ぎてしまったことは仕方がないことです。しかし、真の老化ではないので時間はかかりますが少しずつは改善されます。根気良く治療することです。
 魄戸というツボ、膏肓というツボが肩甲骨内側にあります。この辺りをびわの葉入り棒灸で暖めることは、些細な症状が長年掛けて深い病になったのを回復させる助けとなります。
 毎日暖かい程度で全体で3~5分ほどで良いです。長く患っていても温灸が適さない状態の方もいると思います。掛かりつけの医師や鍼灸師に相談された上でご使用ください。

紫外線 2011/7/28

 皮膚科の医師によると肌に一番よくないのは紫外線だそうです。この紫外線、良い面と悪い面があります。

夏のお嬢さん 紫外線は体内でビタミンDを作ってくれます。ビタミンDを食品から補うだけで良さそうに思えますが、日光に当たらないと不足してしまうものだそうです。 春夏秋の間に妥当な量を浴びれば、ビタミンDは脂肪組織に蓄えられ、冬の3~4ヶ月分は確保されるそうです。 また、日光浴は結核にも効果があります。メカニズムはよくわかりませんが紫外線が関係しているということでした。

 また、一方では紫外線は皮膚のランゲルハンス細胞を減少させたり、活性酸素を発生させたりします。この活性酸素は強い毒性がありカビや細菌を攻撃する重要なものです。自分に対しても毒ですが、体内の抗酸化作用によって比較的早く消えていきます。
 しかし、必要以上に発生してしまうと皮下の脂肪と反応し過酸化脂質を作ります。過酸化脂質は活性酸素ほど毒性は強くありませんが、なかなか消すことができません。過酸化脂質は皮膚において、線維芽細胞をはじめとする真皮の組織を傷つけ、しみ・しわ・たるみといった「光老化」と呼ばれる現象を起こします。これは加齢による老化より影響が大きいといわれています。

 この光老化に対しては何よりも必要以上の紫外線を浴びないようにすることですが、それ以外の対策として、シルクの下着をおすすめします。絹のセリシンという成分には強力な抗酸化作用があります。ですが化粧品としてつけても効果は弱いようです。かといって絹で顔を巻く訳にもいきません。
 効果は多少落ちますが絹のシャツを着ていると皮膚の気の流れがとても良くなり首や顔の部分の肌の気の流れもよくなるのです。同じ絹でもブラウスによく見られるサテンのような生地では効果が少ないです。生地の織り方も大事なんですね。  

2011年8月

たなばた 2011/8/4

 七夕は旧暦の7月7日の夜に行われる五節句の1つです。今の暦の8月上旬に当たり、やはりこの頃から9月にかけが牽牛星と織女星の見ごろのようです。
この夜、中国では娘さんが中庭に集まって桃や瓜をお供えし、そして針仕事が上達するように針の穴に五色の糸を通すのだそうです。また、笹の枝に五色の絹糸を提げて願い事をするという行事もあり、それが日本に伝わって、「笹の葉と五色の短冊」につながったのでしょう。
 五節句は季節の節目に邪を祓う中国の行事がもととなっています。陰陽説の考えから奇数(陽)が重なると陰に転化するとして、季節の植物の生命力を借りて邪気を祓う行事が行われました。
 1月7日:人日(じんじつ)冬に「七草粥」を食べて邪気を祓い無病息災を願う。
 3月3日:上巳(じょうし)河で禊ぎをする。人形に自分のケガレを移し川に流す。
 5月5日:端午(たんご)菖蒲湯につかり邪気を祓う。しょうぶという言葉から立身出世を願う。
 7月7日:七夕(しちせき)願いを書いた短冊を笹の枝に掛ける。
 9月9日:重陽(ちょうよう)菊を飾り長寿を願う。

 七夕 七夕は中国の星祭の神話がアジアの各地に伝わり、それぞれの地域の文化・風習と融合した行事となっています。神話を端折って書くと、仙女と人間の男が結婚し子どもをもうけますが、離れ離れにさせられ年に一度だけ会うことができるというせつないお話です。今で言えば格差婚とも取れるし、単身赴任とも取れますが、浅く簡単に言ってしまえば遠距離恋愛だと思うのです。

 実は今使用している鍉鍼(ていしん)は竹です。竹が一番人間の気になじみやすいという感触があり使用しています。
 この鍉鍼を使った鍼灸治療では陰陽を重視します。ペアとなっている陰のツボ(-点)と陽のツボ(+点)を利用したり、陰の気滞に陽の気を当てたりします。牽牛と織女のように離れていても引かれあう関係です。しかし、陰のツボに陰の気を当てたのでは逆に病気は悪くなってしまいます。恋愛でいうとたちの悪い片思いです。これはよく判りませんが生霊とでもいうのでしょうか。
 昔の人は竹の力を借りて、遠くの人の健康を願ったり、また逆に人の邪気から身を守ったりしたのではないかと想像します。
 「竹と星」で他に連想されるのは、日本の「竹取物語」(かぐや姫)があります。御伽噺というのは直接は言いづらいことを物語にしてしまうという一面もあると思います。竹には他にも意外な真実が隠されているのかもしれません。

なすと冷え症 2011/8/11

 夏野菜はからだを冷やすといわれます。実際のところは調理次第だと思います。冬の大根も大根おろしにすれば体を冷やします。
 中国の古典では「ナスは熱を下げ、出血を止め、腫れを消し、腸を助ける」「食べ過ぎると、声帯と腹を冷やし、のどや腹痛、下痢、流産のおそれがある」ということです。
 今私たちが良く見かけるなすと違い、お尻がとんがった中国ナスがあります。これは確かに食べ過ぎると下痢をするようです。そして、下痢は妊娠中は注意しなければいけない症状です。
 江戸時代に貝原益軒が書いた養生訓に「茄子は性寒利、多食すれば必ず腹痛下痢す。女人はよく子宮を傷ふ」と書かれています。
 なすはインドが原産で、1000年以上前に中国から日本に伝わり、江戸時代には庶民に馴染み深い野菜であるだけでなく、それぞれの土地で独自の品種のなすがあったようです。貝原は福岡に暮らしており、福岡には久留米長ナスというものがあります。それを食べていたかは分りませんが、下痢を起こす解毒作用の強いナスを食べていた可能性は低いと思われます。貝原はたぶん経験ではなく、学んだことを書いたのだと思います。

薬膳/なすそうめん
茄子そうめん

 日本では『秋茄子は嫁に食わすな』という表現があります。これは「養生訓」の影響があるのかもしれません。私の臨床上の経験からすると、女性はたとえ妊娠中であってもそのように心配するような食べ物ではありません。 ところが、男性は違います。男性の冷え性の7~8割りは『なす』がからだに合っていません。女性でなすがからだに合っていない人は極まれです。かなりの性差があります。
 しかも、このような男性が食べても良いナスと食べると症状が悪化するナスがあります。
*問題なし : 中長なす(千両なす。最もよくみかけるなす)、丸ナス(京都賀茂なす、加賀紫へたなす)
*男性は要注意 : 卵形なす(大阪水なす)、小なす、長なす、米ナス

 品種が違えばひとくくりにはできないところがあります。薬膳の資料には「○○は△△に効く」というような単純な表現がありますが、品種によっても、調理の仕方によっても違ってくるので鵜呑みにはしない方が良いと思います。
 なすが合わない体質を改善するためには鍼灸治療が必要ですが、症状だけでも良くしたいという方には揚げ茄子とミョウガの酢の物の組み合わせをおすすめします。これだけでは料理にならないので揚げナスはオランダ煮や金沢の郷土料理「なすそうめん」にすると良いでしょう。
 なすそうめんはオランダ煮に茹でたそうめんを加えてさっと煮て冷やしたものです。生野菜はからだを冷やしてくれるので食べる機会も多いのですが、加熱して冷やす方が消化器にはやさしいのです。

再生する脳と音 2011/8/18

 懐かしい曲、好きな歌などを聴くと元気が出たり、幸せな気持ちがします。
 この思い出や好き嫌いは脳の奥の海馬や扁桃体が重要な役割をしています。もちろん音だけでなくおいしい食事やきれいな景色でもいいわけです。 リラクゼーション効果があり自然治癒力の助けにもなります。

 音の発生源からの波動は鼓膜を震動させ聴覚細胞に刺激を与えます。人が聞くことができる周波数があり、それ以外は音として感じることができません。 自然の音の中には人間が聴き取ることができない周波数のものも含まれています。
 春のかえるの鳴き声も夏の終わりのヒグラシの鳴き声もどちらも私にとっては心地よいものです。でも、脳への効果としては違いが感じられます。ひぐらしの鳴き声は脳の若返りと関係しているのではないかと考えています。 音波は他の五感の刺激と異なり、周波数によっては海馬や扁桃体を介さずに直接特定の部位に刺激を与えることがあるのかもしれません。 他にも秋の虫の音や嵐の風の音など、同じ様な効果がありそうな気がしますが、生で聴かないといけないようです。

 以前は脳は再生されないというのが常識でした。ところが近年、成人の脳も神経幹細胞から分化・再生がおきることが明らかになりました。
 皮膚の基底細胞のように常に新しい細胞を作って垢となって剥がれていくのとは違うので、脳梗塞や脳挫傷の際に現れて活躍してくれるのでしょう。 脳梗塞の発症は比較的年齢が高くなってからです。そうすると遺伝子も傷ついていたりするのじゃないでしょうか。 なにもいざという時のためばかりではなく、脳もあまり古くならないようにメンテナンスしておきたいものです。

 自然が少ない環境で暮らしている方のために何か良い方法はないかと探していると、理屈は分りませんが曲の中にも同じ効果と感じられるものが見つかりました。 TVアニメ「キテレツ大百科」のテーマソングだった『はじめてのチュウ』です。モーツァルトも脳に効果的なのですがどうも作用が違うようです。

鮭と日焼け 2011/8/25

 鮭は成長段階での呼び名があります。沖取りの鮭を「時知らず」、産卵のため接岸したものを定置網で取るのを「秋鮭」、川に入って婚姻色があるのを「ブナ」と呼びます。
 遡上のとき鮭は絶食し、それまで蓄えた栄養を使うので痩せていきます。その過程で、鮭の身の赤色の素、アスタキサンチンは筋肉から出て体表と卵に移動します。
 川に卵を産むのは天敵が少ないから好都合ですが、その反面卵は紫外線からダメージを受けます。そこで、海でアスタキサンチンを蓄え、河に遡上したとき、体表と卵に移動させ紫外線による活性酸素の害から守っているようです。

鮭

 アスタキサンチンは抗酸化作用が強いので「目に良い」あるいは「美容に良い」など様々な宣伝文句があります。私はヒトが摂取した際のアスタキサンチンのターゲットは視神経だと思っています。 しかし、ブナ化した鮭は違うようです。日焼け後の活性酸素を減少させてくれる感じです。私の仮説ですがアスタキサンチンを鮭の体表に導く成分によってこの成分が多い時期だけ、人が食べても皮膚組織に作用するのではないでしょうか。
 鮭は遡上する際痩せていくので味が落ちるといいます。でも、川の水を飲んで体質を変え、絶食をしながらわが子を守った鮭は人にとってもありがたい効能があるのです。
 ただし、買うときは塩鮭ではなく、ブナの生鮭か冷凍ものを買ってください。皮ではなく身に効果があると思います。身を焦がさない料理、ホイル焼きやお鍋でどうぞ。効能は比較的長く働くのでシーズンに1度は食べてみてください。
Cpicon 生鮭のちゃんちゃん焼き風ホイル焼き by 海 砂

2011年9月

脾臓 2011/9/1

 東洋医学には「先天の気」「後天の気」という概念があります。

東洋医学/後天の気

 先天の気は受精のときから生まれ、生命の土台となる気です。
 人間の遺伝子はオラウータンと98%以上同じです。ウニとは約70%同じです。それでも人間が他の何ものでもなく人間の成熟に向かって発達をしていくことができるのはこの先天の気があるからと考えています。

 生後もこの先天の気によって人は守られていきますが、その力は徐々に減少していきます。それを補うようにして増えるのが後天の気です。先天の気は遺伝子と関係が深く、後天の気は主に飲食物です。

 実は薬膳や漢方薬が効きにくい方がいらっしゃいます。脾臓の部位に気の滞りがある方です。
 東洋医学では「脾」は後天の気と深い関わりがあるとされています。しかし、このときの「脾」は西洋医学で言うところの脾臓ではなく、消化器全体の機能を指す東洋医学独自の表現とされています。これについては以前から懐疑的でした。何故なら、東洋医学が盛んだった後漢の時代にはすでに解剖や外科手術も行われており、脾臓には消化管と違い直接食物が通過しないことも理解されていたと思います。それでも尚「脾」を食物から後天の気をもらう臓腑として当てたのはそれなりの決定的理由があったのではないかと思えます。 ただ、今ではそれを感じることができないのかもしれません。

 脾臓の気滞の原因を取り除くことがまず第一です。そして、鍼治療をすれば改善されるのですが、来院できない方のためにはヨガをお勧めします。
 ヨガは脾臓の治療ということではありませんが、先天の気を補うことが可能だと考えられるからです。

思秋期 2011/9/8

 発達心理学では中年期のことを思春期に対比させ『思秋期』と表現されることがあります。
 若いときは見えない将来に夢や希望があったのに、人生も半ばとなり、残りの人生の現実も見えてきます。「こんなはずじゃなかった」「これでよかったのだろうか」という思いが湧いてきます。からだは確実に老化が始まり、女性で言えば更年期の年頃です。

 エリクソンのライフサイクルによると思春期の発達課題(危機)は「アイデンティティの確立」です。「自分は何なのか」「どんな仕事が向いているのか」苦しい自問自答を繰り返し大人になっていきます。
 この時期は精神面や身体の変化だけでなく、実は脳にも大きな変化が起こっています。 シナプスの多量生産と消去です。特に前頭野での変化が大きいそうです。前頭野とは高度な思考を担う部分です。よく使う回線は残され使われない回線は消されていきます。思春期から青年期にかけてどのように頭を使ったかがその後の人生に大きな影響を与えることになります。

 思春期と思秋期の発達課題は学校での前期試験と後期試験に例えると分りやすいかもしれません。成人の中にはこの前期試験を受けないで済ませている人が意外に多いのです。その人達には後期の試験は、より難しく感じられるかもしれません。

 中国の「礼記」に「不倶戴天(ふぐたいてん)」という言葉があります。「父の敵とは、同じ空の下で生きることはできない、兄弟の敵は、殺すための武器を家に取りに帰る暇などない、友人の敵とは、同じ国で住むことはできない、必ず殺すべきである」という内容です。
 現代の日本人には共感しづらい激しい感情だと思います。ですが、この[敵]を[問題]に置き換えると思春期と思秋期の悩みを言い表してくれそうな気がします。「自分は何者かという問題を解決せずしてこの人生を生きることはできない。理屈ではなく心の奥から湧き上がってくる思いがある。」
 中年期の悩みは人それぞれですが、老化が始まり体調が変わるときです。健康回復のお手伝いはできると思います。

髪は女性の命 2011/9/15

 鈴虫はオスしか鳴きません。その鳴き方には3種類あるそうです。メスを誘う声、縄張りを知らせる声、威嚇する声。男性が声変わりで低い声になることもこれと同じような効果があるようです。
 そもそも男性の声変わりは男性ホルモンによるものです。今では人道上存在しませんが、近代前の欧州では去勢し声変わりが起きないようにしたカストラートという歌手の職業が存在しました。成長ホルモンは通常通りなので体格には問題は無かったようです。
 アメリカの学者が男性の高い声より低い声のほうが女性を引きつけるという研究結果を発表しました。彼は孔雀の尾っぽのようなものだと言いましたが、鈴虫の鳴く声の方がぴったりだと思います。
すずむし 動植物の世界ではこのようなサインやコミュニケーションは相手の成熟も促すという効果が見られます。人間の女性も低い男性の声に惹かれるというだけでなく、からだに何らかの作用が有ってもよさそうなものです。

 東洋医学では髪を「血余(けつよ)」といいますが、「髪は腎の華」という言い回しもされます。腎気は生殖能力と深い関係があり、また、髪の毛は性ホルモンの影響を受けています。私としては男性の低い声は女性を引きつけるとともに、女性ホルモンを活発にし女性の髪を艶やかにしているのではないかと思います。
 音は聴覚器から聴神経を介し視床に入ります。視床下部では「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」が作られ脳下垂体の「性腺刺激ホルモン」の分泌を促します。このホルモンによって黄体化ホルモンと卵胞刺激ホルモンが分泌され、最後に卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されます。
 不妊治療を目的に来られている方で、肌や髪がきれいになるというケースが多いのです。やはりホルモンの分泌と髪の健康は関係が深いようです。また、閉経したお年寄りでも髪は艶やかになるのです。ホルモンの中でも『性腺刺激ホルモン』が関係しているのではないかと推測しています。

 種の保存から言うと、男性の低い声は精力が強く、女性の艶やかな髪は健康な子どもを産めるサインとして重要なものだったのだと思います。
 現代では様々な頭髪ケア用品があり、すてきな低音の男性がいなくても困りはしないのでしょうが、髪も内からきれいにしたいものです。 「性腺刺激ホルモン」を直接増やすことは鍼灸では難しいのですが、その上の視床下部を刺激すると良いかもしれません。
 音楽ではローズマリー・クルーニーのオリジナルテンポでの「Swey」という曲がよさそうです。

秘密の書庫 2011/9/22

 「神様のカルテ」は映画にもなった有名な小説らしいのですが、内容よりこのタイトルに興味を持ちました。 もし、神様がカルテを書いていたとしたらどんな内容なのだろうと。

 東洋医学の古典として最も有名なのものは「黄帝内経(こうていだいけい)」です。この中には健康や病気のこと、治療の方法や技術が書かれています。古代中国では医学書だけでなく重要な書物が沢山あったはずなのですが、戦争のたびに敵国の書物は燃やされて消えていったそうです。
 失われた古書の中には私たちの知らない治療法や処方も書かれていたことでしょう。これらの書物が残されていたなら、鍼灸学も現在とは違ったものになっていたかもしれません。

 現代の医学書、特に医学辞典などは非常に分厚くて、本棚から取り出すのもひと苦労でした。でも今は電子辞書となり、病院では電子カルテとなりました。電子機器に依存しなければいけないので困ることもありますが昔に比べると便利になりました。
 カルテは日記やメモと違い自分以外の人も読むものです。日本語で書かれていたとしても字が汚いと読めないということが筆記のカルテではありました。特に処方を読み間違えると大変なことになります。紙のカルテはシートをリングファイルで綴じた形式が多く、紛失や改ざんというリスクもありました。

 テレビドラマ「JIN-仁」では江戸時代にタイムスリップし医療を行います。ドラマの中で主人公が歴史を変えてしまうことで悩むシーンが何度もありました。しかし、どれだけ科学技術が進歩してもタイムスリップするということはありえないと思います。それはカルテで言えば改ざんになってしまいます。 最近は本の背の部分を裁断しスキャンにかけるのが流行っているようですが、歴史をそんな風にばらしたり短縮したりすることはできないのです。

 神様がカルテを書いていたとしたら、この世界の処方箋にはなんと書いてあるのでしょうか。誰にも判る言葉で、誰にも盗まれない秘密の書庫に、でも見たい人は見ることができる、そんなところに神様のカルテはあるのかもしれません。
 みんな夢の中ですでに覗き見をしているのに、忘れているだけかもしれません。

東洋医学と中年ダイエット 2011/9/29

焦  人類は食料が手に入らないときのために、エネルギーを脂肪として貯め易い体に進化させてきました。さらに日本人を含めアジア人はβ3アドレナリン受容体の異常(倹約遺伝子の1つ)のある人の割合が他の人種よりも高いそうです。その人たちは基礎代謝が低く粗食に耐えられる体質のため、逆に飽食の現代では肥満になりやすい人たちです。  これに限れば解決策は単純だと思うのです。昔ながらの粗食にするか、基礎代謝が低い分運動をするかです。
 中年になってからの肥満、これも多くは加齢により基礎代謝が低下するからと説明されていますが基礎代謝だけでは、贅肉の付き方が変わってくることの説明には不十分です。もちろん老化により内臓や筋肉など全てがたるんでくることも関係はしているとは思います。中年太りの原因を私なりに考えた結果は  ①「三焦」の機能低下 ②動脈硬化 ③「心包」の機能低下 です。

包 「三焦」と「心包」は東洋医学だけで使用される言葉です。働きは有りますがそれに相応する臓腑はありません。一般的に理解されているそれぞれの働きを簡単に言うと、三焦は水分・栄養の代謝で心包は心臓を守っています。私独自の考えとしては三焦は栄養を全身に配る働きをし、心包は脂質をエネルギーに変える働きをすると思っています。 もともと三焦と心包は表裏の関係にあるので、機能上も関係が深いと推測されます。

薬膳/くるみ入りしめじ御飯
くるみ入りしめじ御飯

 肥満の方は三焦と心包の【氣虚】がある場合が多いのです。この二つには形が無いのにどうやって判るのかと疑問を持たれると思います。 脾虚の場合は脾臓に反応があります。三焦と心包の場合は実は複数の箇所に反応があるのです。その部位が三焦や心包の働きをする器官(臓器ではありません)かどうかは断言できませんが関係深い部位であることは間違いないと思います。

 中年を過ぎると腎氣も脾氣も少なくなってきます。すると三焦の氣も少なくなります。栄養を全体に配る力が弱まり、ウエスト周りに偏って脂肪が付きます。ダイエットとしてカロリーを減らしても、心包の氣も弱いため貯めた皮下脂肪をエネルギーに変える力も不足しています。 そのようにして中年の体型が出来上がるのではないでしょうか。
 三焦と心包の働きを助ける薬膳は「くるみしめじ御飯」です。三焦と心包の改善は絶対必要と思っているので食べてみる価値はあると思います。

2011年10月

山の洋服 2011/10/6

 紅葉は秋の楽しみのひとつです。実はあの紅葉する木は植物の中でも進化した高等な生き物らしいのです。

 松・杉に代表される針葉樹は約3億年前に地球上に出現しました。1億五千年~1億年前には、根から吸い上げられた水や養分を通す道管と呼ばれるパイプをもつ進化した広葉樹が出現します。 広葉樹は山のエネルギーをもらい春には広い葉っぱを育て沢山の光合成を行います。 被子植物の広葉樹は、受精の確立を高めるため花から良い香りや蜜を出すようになり、より広範囲に種が運ばれるようにおいしい実をつけるように進化します。

 秋の落葉は、広葉樹の低温対策です。冬の寒さで導管内の水が凍ってしまい破裂してしまう恐れがあるのです。それを防ぐため冬の前に葉を無くし導管の水を減らすことによってその危険を回避しています。 寒暖の差が激しいと紅葉がきれいになるといわれていますが、急に冷え込むと葉のでんぷんを回収しきれず赤色の色素が沢山できてしまうからだそうです。葉が枯れるとき葉緑素はアミノ酸に変わり地に落ちて微生物の栄養となります。そしてまた再び土に返ります。

 紅葉と風水  東洋医学では陰陽論と五行論を基本とします。
 『五行論』というのは五つのめぐり(行)を表します。木は乾燥し火を生じ、火は灰を作り土を生じ、土はその中で金属を生じ、金属は空気を冷やし水を生じ、水は木を生じます。
 風水は別名「地理」ともいいます。私は五行は地のエネルギーの循環のしくみと解釈しています。 東洋医学には経脈、経穴というものがあるように、風水にも龍脈、龍穴というものがあります。この龍の動きは「色と形」に影響を受けるため、風水では置物の色と形で運気の改善を図ることができるのです。

 落葉樹の葉が赤や黄色になるメカニズムについては分っているようですが、その目的は未だに不明のままです。ですが紅葉している時、山のエネルギーが一番高いような感じがするのです。
 落葉広葉樹は進化した高等植物です。翌年も元気な葉を出せるように、色で山のエネルギーを高めているのかもしれません。ひとも紅葉と同じ様な配色の洋服を着ると、秋の山の力を分けてもらえて寒い冬を乗り切れるかもしれません。

ウイルスと肥満 2011/10/13

 寄生生物は宿主を都合のよいようにコントロールするということが自然界ではよく見かけます。
 特に寄生虫は宿主を変えながら成長していくので、次の宿主に移り変わるためにはその生物の近くに今寄生している生物を近づけさせなければいけません。槍形吸虫は寄生したアリを葉っぱの先端に移動するようコントロールし、動物に捕食されやすくします。 また、魚に寄生している別の寄生虫は、魚が水面へ飛び上がる動きを誘発し鳥に捕食されやすくします。

 C型肝炎ウイルス(HCV)は肝細胞の中の油滴(脂肪蓄えた袋)を利用して増殖していることが判りました。HCVはそれだけでなく、自分が持つたんぱく質で油滴を増加させていたのです。そのためHCVに感染すると脂肪肝になり易いという訳です。ウイルスも自分が繁殖し易いように人間を変えていたのです。

薬膳/バジルチキン
バジルチキン

 脂肪を利用するウイルスといえばもう1つ『アデノウイルス36型』があります。こちらも近年脂肪組織に感染し脂肪細胞の増殖や脂肪蓄積の促進に関与していることが明らかになりました。
好んで脂肪組織に生息しているのは彼らにとって何か良いことがあるからに違いありません。となれば脂肪組織が増えるように人間をコントロールしているかもしれません。 実際、動物実験ではアデノウイルスに感染直後の脳を調べるとウイルスが視床下部に存在していることが判っています。視床下部は食欲中枢があるところで、そこに感染することによって食欲を増進させている可能性があります。

 脂肪組織の感染も一応感染なので体には氣の滞り(氣滞)ができます。ですが非常に弱い反応です。このように地味に脂肪組織に感染している微生物はアデノウイルス以外にもいるようです。 脂肪組織を健康にし微生物を減らすことに役立つ薬膳はバジルチキンです。バジルは必ず乾燥を使用してください。
Cpicon 鶏肉のヘルシーソテー@レモンバジルソース by ゆーたらう

人間本来の食べ物 2011/10/20

 人間が混合食動物であることは間違いありません。ですが何をどの割合で食べるのが本来の人間の健康な食事かということでは色々な考えがあると思います。
 ヒトの永久歯は親知らずを入れて32本です。そのうち野菜を切るのに適した切歯は8本、肉を裂くのに適した犬歯は4本、穀物や木の実をすりつぶすのに適した臼歯は20本です。そうするとそれらを2:1:5の割合で食べるのが最も人間のからだに合っている。
 ここでなるほどと思った人は要注意です。詐欺に逢いやすいタイプかもしれません。歯の種類と数で決めるのはやはり論理のすり替えです。

 デイヴィッド・ホロビンという人は著書『天才と分裂病の進化論』で創造性豊な人間らしい現人類に進化できたのは動物性脂質が重要な役割をしているのではないかと述べています。
 人間の脳はリン脂質という脂肪でできています。脳の成長と発達にはアラキドン酸とドコサヘキサエン酸が必須です。 ほとんどの植物はそれらの材料であるリノール酸とαリノレン酸しかなく、効率が良くありません。実際、初期の人類は水辺で生活し、魚・甲殻類・両生類・鳥・昆虫などを食べていた形跡があるそうです。動物性といっても不飽和脂肪酸が多い食料です。
 彼はホモ・サピエンスが芸術・宗教など豊な創造性と高度な記憶と思考をもつように進化できた理由は、動物性脂肪の多い食生活と脂質代謝の突然変異だったと言うのです。 つまり、彼の人類の進化と統合失調症の遺伝子は関係しているとう推測が正しいとすれば、私たちは人類の1%が統合失調症を発病するというリスクと引き換えに進化を手に入れたということになります。

 人間と98%遺伝子が同じオラウータンはほぼ草食の動物ですが、ゴリラやウサギは完全な草食動物です。しかし、ゴリラもウサギも草を消化管内で醗酵させるため自分の糞を食べます。完全な菜食主義の方はどうしているのでしょうか。もちろん糞に変わる発酵食品を摂れば良いのかもしれませんが、かなり今の人類には負担がかかる食生活の気がします。
 成長期を過ぎてしまえば動物性脂肪もそんなに必要ではなくなるのですが、人間本来の食事が脳をより活性化してくれると思っています。

2011年11月

2つで1つの世界 2011/11/3

 ロールケーキを見るとらせんを描いています。それを裏から見ると同じ様にらせんを描いていますが、回り方が逆です。違う模様が現れていますが同じ1つのものです。
 この【2つだけど1つ】というものの見方は東洋医学で重要な要素です。代表は陰陽論です。
 右回りのらせんは陽で左回りは陰です。体は陰で氣は陽です。脾臓は陰で胃は陽です。臓腑の組み合わせについては【表裏の関係】と表現します。
 らせん階段は逆まわりになると、登ると降るという逆の動きになります。動きは逆でも同じ階段です。炎症があると生じる陰の気滞と凝りがあると生じる陽の気滞、働きは逆ですが同じ氣が起こしている現象です。
 何かと何かが対になって変化に対応しています。日本鍼灸では腹診というものがあります。腹部に各臓腑に対応する場所が有ります。それによると肝の部位は左季肋部です。 実際に肝臓があるのは右の上腹部です。西洋医学から見ると間違いということになるのかもしれませんが、感染や心的ストレスで肝臓部位に陰の気滞が発生しているときは、左の季肋部あたりに陽の気滞が発生し、実際触れると緊張が有ったりします。

ロールケーキ

 この場合、左右の組み合わせで発生しているということで理解できるのですが、「なぜ、こことあそこが繋がっているのか?」と理解に苦しむことも非常に多く有ります。 たとえば至陰というツボ、お灸すると逆子の特効穴ですが、何故それが子宮に作用するのか分らないのです。これ以外にも色々あるのですが頭で考えても分るものではなく、からだに聞くしかないのです。
   1つの現象だけをみてそれを理解したと思ってはだめで、それと表裏の関係にある現象がどこかに起こっているかも知れないと思っていた方が良いようです。 最近の天候や自然災害の様子を見ていると、からだだけではなく地球規模や宇宙規模で言える事ではないかと感じます。

こころの老化 2011/11/10

 高齢になって脳も老化すると物忘れが多くなったり、根気が無くなったり、話がくどくまとまりが無くなったりします。これとは別に『心の老化』というのがあります。

 心が老化すると新しい人間関係を築くことや新しいことへの挑戦がおっくうになったり、感動することが無くなったりします。 この心の老化は厄介なことに体の老化に拍車を掛けるようなのです。患者さんを診ていて30代・40代で心の老化を起こしている方がいらっしゃいます。この方たちは確実に同年代の方よりも体の老化は早まっています。

 この心の老化と深い関係にあるのがA10神経ではないかと考えています。
 A10神経は快楽神経ともいわれちょっと変わった神経です。こころの働きに深く関係している脳の箇所だけを通り、どこからでもドーパミンを分泌し、通り道にある脳を覚醒して快感や安心の情動を起こします。神経細胞というよりもホルモン分泌細胞といっても過言ではないそうです。
 心が人間関係などのストレスに長期間曝されるとA10神経はうまく働けなくなって、その結果新しい人間関係も楽しみではなく、感動もできなくなっていくのだと思います。 さらにA10神経が働かなくなったことで【若返りホルモン(成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン、インシュリン様成長因子-1など)】が通常よりも減少することによって、同年代の人よりも早く体が老化していくのではないかと推測しました。

 しかしA10神経は視床下部を通っても【成長ホルモン放出ホルモン】との連係はないようなのです。あとは臨床からの東洋医学的推測になります。
 心の老化症状と前頭部に気滞のある患者さんは足部が氣虚の状態であることが多いです。足底はA10神経と関係しているのかもしれません。このような状態の場合、足元から気が入ってきにくい状態になっており、結果として腎氣の消耗が大きくなります。腎氣は先天の気であり受精卵のときから人の成長発達を助けている氣です。その腎氣が予定より早く疲弊することによって成長ホルモンなども通常より少なくなったのではないかと考えています。

 A10神経が興奮するのはものごとの始まりの時期に多いように思います。これからハナを咲かせなくてはならないとき体は若くないと困るのです。逆に言えば、ハナが咲き続ける元気を無くしたとき成長ホルモンは不要になってしまいます。
 心の老化は案外治りにくいものです。予防には味噌汁が良いと思います。

出会いの天癸 2011/11/17

 子孫を残すというのは動植物にとって自然な現象で珍しいことではないのですが、視点を変えると神秘ともいえる不思議があります。
 不妊・流産などの出産には至らない原因には西洋医学的に言っても多種多様なものがあり、複雑なものです。 鍼灸院にこられる方の不妊の原因については、私の経験上では半分は感染が関係しています。その内のさらに半分ぐらいは風邪や食べ物からの感染というありきたりなもので卵巣・視床下部・卵管の働きに影響を及ぼしているものです。 ですがこれらがあっても妊娠できないというわけではないのです。

  妊娠の準備として初経が訪れることが必須条件です。人間が受精卵から胎児に成長し、子どもが大人に成長するには先天の気である【腎気】の働きが必要です。 そうすると初経においても生殖機能と関係が深い腎気が最も重要かと思われるでしょうが、実はその前に【天癸(てんき)】というものが働かないといけません。 教科書的には天癸は「男女の性機能の成熟と衰竭の指標で、人体の成長発育を促進し月経・妊娠を維持する機能」と説明がされています。 天癸が生じて一定量を超えると月経が始まります。そして、一定量を下回ると閉経し消失します。 この天癸は子供となる命との出会いや妊娠継続にも重要な役割をしていると思います。

  妊娠の前の重要な出会いは結婚相手との出会いです。会った瞬間に「この人は自分と結婚する人だ」という直感があったという話を時々聞きます。 第六感ともいえるこのようなインスピレーションは、額にあるとされる第三の目【天目】によるもののようです。 天目の力は天癸ではありませんが、その延長線上にあるものだと思います。どちらも天の用意した重要な出会いと関係があるような気がします。

風邪 2011/11/24

 薬膳が【未病を治す】ということであれば、最も薬膳らしい料理は『サムゲタン』だと思います。仙人食といっても過言ではないかもしれません。もちろん材料が悪ければ薬も毒となってしまいます。
 韓国では夏ばてをしないよう、夏に食べることが多いようです。夏の滋養強壮食として食べるサムゲタンの薬効の鍵となっているものは【鶏肉+ニンニク】です。
 サムゲタンは冬の風邪引きのときにも食べられます。ですが、私の見立てではこの場合ニンニクを入れるとまったく効果がなくなるので入れてはいけません。 この風邪の薬膳として食べるサムゲタンの薬効の鍵は【鶏もも肉+長ネギ】です。

薬膳/水炊き
水炊き

 若い頃はよく風邪を引いていましたが、鍼灸師になってから風邪で寝込むということがありません。 抵抗力が付いたということもありますが、風邪気味のときに漢方薬を1~2包飲めばすぐに良くなります。
 風邪の原因となる微生物によってどの薬を選ぶかが決まってくるのですが、普通の人は判りません。 そこで、よく使う「麦門冬湯」を薬膳に変換しようと試みたことがあります。ところがあまりにも複雑なレシピで、何よりもかなりまずそうなのであきらめました。
 やはり、病原微生物を退治するときは薬膳ではなく漢方ですね。適材適所、それぞれに必要な場面があるのだと思いました。

 ということでサムゲタンは風邪の菌をやっつけてくれるわけではなく、上気道の炎症を鎮めてくれるのです。 サムゲタンは自分で作るのは大変ですし、実は効果が短いのです。そこで、家庭で簡単にできる風邪の薬膳は、鶏もも肉と長ネギ(白部分)とオリーブの実を使った水炊きです。 オリーブの実を入れると効果が長持ちします。味付けは塩少々のみです。

2011年12月

顔と人格 2011/12/1

 顔にはその人となりが表れます。
 何人もの顔形や皮膚の色などをコンピューターで平均化した「平均顔」というものがあります。「銀行員の平均顔」「東大生の平均顔」など、それぞれ『らしい顔』になっています。 似た考え方や価値観は似た顔を作るということのようです。

顔を作る 「40を過ぎたら自分の顔に責任を持たなければならない」そう言ったのはエイブラハム・リンカーンです。 官僚を選ぶ際、ある男性を「顔が気に入らない」という理由で選考から外しました。これはそのとき知人から「顔は本人の責任ではない」と言われ、彼が言った言葉です。
 もちろん「40歳を過ぎたら責任を持ってがんばれ」という意味ではありません。成人してから40歳までの間、どのように生きてきたかが顔に表れるということです。 リンカーンには彼が努力して才能を伸ばしてきたような顔に見えなかったのかもしれませんし、誠意を持って仕事をしてきた顔には見えなかったのかも知れません。

 生まれたばかりの赤ん坊にも【性格】はあります。脳の奥の快・不快の感情を判断する大脳辺縁系というところで0~2歳のうちに形成されます。性格の核となるこの重要な部分は、その後の人生においても修正が困難といわれています。
 脳には本能と関係のある古い脳の部分と、人間らしい高度な知性を司る新しい脳の部分があります。 思春期から青年期にかけ前頭野が発達し、人が野生の馬を乗りこなすように知性で情動をコントロールすることを学びます。性格の核の周りに経験を積み上げ【人格】は形成され磨かれていきます。

 成長ホルモンによって背が伸びる頃、顔も子ども顔から大人顔に変化していきます。成長発達の段階では遺伝子の影響の方が大きいので十八歳頃の顔というのは、その人らしい顔の基本形でありその後の努力でも変えられないのではないかと思います。 また、肌の真皮層も最も活性化されている時期だと思います。しわ、くすみ、たるみなど無く「色の白いは七難隠す」「鬼も十八、番茶も出花」というところでしょうか。

 その若さのピークを過ぎれば「お肌の曲がり角」、ゆっくりと坂を転がり落ちていきます。この下り坂の時期にどんな生活をしたかが顔に刻まれていくのです。言い換えればここが自己責任の部分であり、努力で変えられる部分です。
 大変ですがもう一度山を登って降り方を修正してみるのもありでしょう。美容鍼では『その人らしさ』の顔は変えられませんが、肌に張りを持たせ、しわを浅くすることによって数年分は時間を巻き戻すことができるかもしれません。

気のランダム・ウォーク 2011/12/8

 東洋医学は【氣の医学】とも言われ、いかにして氣を動かすかということが重要となります。氣を自由に操るということでは鍉鍼(テイシン)は刺す鍼と比べ物にならないくらい長けています。
 患者さんから時々「氣は血流と同じですか」とか「氣は気持ちのことですか」と尋ねられることがあります。中には当院の治療を【気功】と思い込んでいる方もいます。
 確かに氣は気持ちによって動かすことができます。気功家は鍛錬の積み重ねによって病人に対しては健康になるように気を発し、武術では相手を倒す目的で気を発することができるようになるのかもしれません。 気そのものは善でもなく悪でもないのですが、それを発する人の目的次第で相手が健康になったり、病気になったりもありえるのです。 ただ安心していただきたいのは、竹の鍉鍼での治療は鍼で患者の自然治癒力を働かせており、施術者の氣を患者に直接当てているわけではないので、体が健康になる方向にしか働かないのです。

 患者さんから見ると、単に体に鍼を当てているのを繰り返しているだけで区別は付かないのですが、氣の動かし方は何種類もあります。
 気の動き方として中にはまっすぐ流れないで予測の付かない動きをする場合があります。こういう酔っ払いの千鳥足のような動きをランダム・ウォークというのだそうです。  このランダム・ウォークという動き、超新星爆発の残骸でもあるそうです。

超新星爆発の後にできる超新星残骸
提供元:NASA Images

 宇宙にある重い星は最後には大爆発を起こし星としての生涯を終えます。この爆発は非常に大きく明るい星が突然現れたかのように見えるため「超新星」と呼ばれています。
 爆発はほんの一瞬ですが、それによって生じる衝撃波は10万年以上も宇宙空間に残るそうです。それを「超新星残骸」と言います。
 星の内部には核融合反応があり、それによって生命にとって重要な酸素や窒素も生まれてきたということです。様々な元素が大爆発で宇宙に飛び散り、そして再び新たな星となったり生命の素となります。 「一粒の麦もし死なずば…」宇宙的な死と再生です。

 超新星残骸が地球に降り注いでいる宇宙線の発生源である可能性が高いといわれています。また私自身は、残骸内の核融合反応による悪い波動が私たちの健康を害しているのではないかと感じています。
 地球人に害を与える刺激を送っていることは間違いありませんが、超新星爆発そのものは善とも悪とも言えるものでもありませんし、受け入れて耐えるしかないのかもしれません。 宇宙線の傷には冷奴を食べ、宇宙の良くない波動には時々森を散歩するくらいでしょうか。
 どこの職場にも一人くらいは超新星残骸のような人がいるのでしょうね。

懐かしむという治療法 2011/12/15

小路

 老年期は社会的役割や身体機能の喪失に伴い自尊心が低下し易く、抑うつなどの精神症状が起こりやすくなります。 心理療法の1つに回想療法というものがあります。自分の人生を振り返り、かけがえのない人生であったと肯定する作業です。
 以前思春期と中年期を前期試験と後期試験に例えましたが、その流れでいうと老年期は卒業試験に当たります。 エリクソンはこの老年期の発達課題(危機)を【統合性 Vs 絶望】と表現しました。

結婚

 精神活動を東洋医学の五行で分類すると〔魂・神・意・魄・志〕に分けられます。他に智・精が加わることもあります。
この内の【神(しん)】は神様ではなく精神というイメージで良いと思います。 【神】は氣とは別物で身体の自然治癒力にはほとんど関与しません。体以外の精神や運気というものと関係が深いようです。 ただ、この五つはそれぞれ骨格の特定の部分の老化と関係があるように思います。【神】の場合は膝の老化と関係があると推測しています。 【神】の力が弱くなると膝の変形や軟骨のすり減りをくいとめる力が弱くなるようです。

温泉旅行

 成長というのはある意味、忘れることと思い出すことです。 自転車に乗れるようになると乗れなかった時の感覚は忘れ去ります。何故乗れなかったのかが分らなくなるくらいです。 親や教師になって育てる立場になると、何度練習をしてもうまく乗れなかった子どもの頃の情動を思い出せなくてはいけません。 そうでなければ「そんなこともできないのか」と言ってしまうかもしれません。 単純な数式を思い出すという作業ではなく、情動を思い出すというのが大切です。

 老年期に限らず情動の記憶を手繰り寄せるという作業は【神】の力を強めてくれているように思います。 【神】の働きが本来何なのかは判りかねますが、生まれる前とか人類以前とか、かなり古い記憶を手繰り寄せる働きをしているかもしれません。

もち 2011/12/22

雑煮 毎年正月明けに体調を崩すという人はいませんか。その人は餅が合わなくなっているかもしれません。次の正月こそは体も軽やかで気持ちの良い一年の始まりとしてほしいものです。

 「何もしていないのに、急に体が痛くなった」といわれる患者さんは多いです。この場合大抵は食べ物が原因です。 体に合ってない食材を食べたか、質の良くない食材であったかです。
 お餅は合わなくなっている人が意外と多いのですが、もち米のお菓子やおこわは大丈夫です。 たぶんつき立てや完全に堅くなるまでの数日間の餅が問題なのだろうと推測します。 そのため、餅が合わないということが自覚されにくく、正月ゴロゴロしていたのがいけなかったのだろうと考える人も多いと思います。

 対策としてまず、つき立ての餅を食べるときは大根おろしや納豆を付けると大丈夫です。お雑煮は完全に固くなったお餅を使います。 それでもいつものように痛みが出てきたらシバタケ(アミ茸)を食べると症状は改善されます。正月は時期外れなので長根商店の「あみ茸なら茸炊き込みご飯の素」が良いと思います。 アミ茸の水煮や塩漬けでは効果は少ないです。

おとそ 2011/12/29

 ♪生きることは汚れること♪と歌うCMソングがありました。まさにその通りで人間は生きているというだけで様々な毒が体の中に入ってきます。 きれいにするには汚れたものを捨てて新しいものに代えるのが最も手っ取り早い方法です。しかし、人間の場合古い体を捨ててという訳には行きません。 シャツも洗濯しないで着続ければ寿命が短くなります。80年以上同じ体を使い続けるには定期的な洗濯が必要となります。

 そのように体は年齢と共に汚れ老化しますが、魂も同じなのだろうと思います。輪廻転生が有るとするなら、新しい体に古い魂を入れていたのでは意味がありません。 そのため生まれる前に全ての記憶を消し、必要以上の欲望や人・物に対する先入観のない状態にしてリフレッシュさせているのかもしれません。 体に時々洗濯が必要なように生きている間に魂も時々洗濯が必要と思います。除夜の鐘、そして初詣やお屠蘇(おとそ)は魂の洗濯をしているのではないでしょうか。

薬膳/シナモン水
シナモン水

 お屠蘇(おとそ)はお正月に飲むお酒かと思っていましたが、「屠蘇延命散」を1日浸けこんだ薬酒だそうです。 名前の由来は「邪気を屠り(葬り去り)、魂を蘇らせる」というところから来ているということです。

 私は薬酒が嫌いなので同じ効果のある飲み物を作ってみました。【シナモン水】です。軟水1リットルにシナモン1本入れ冷蔵庫に入れます。軟水は3日間、超軟水はまる1日です。後は1日50cc程度を3日間飲みます。
 ここで気が付きました。屠蘇散を煎じないのは目的の薬効が得られないからで、みりんや酒を使ったのは常温でも作ることができたからでしょう。そして、いくつかの異なる処方が残っているのは地方や時代で飲まれているアルコールが違ったからかもしれません。
 私は単純に飲む水としてみれば、やや硬水がおいしいと思うのですが、昆布や煮干を一晩水に浸してだしを取るというときは軟水の方が良いそうです。 軟水の「天海の水」は水道水の1.2倍旨み・甘み成分が出やすいということです。当院で使用している水は超軟水なので1.5倍ぐらいはだしが出るかもしれません。

 身体に効く漢方は一般の人でも効いた感じが判ると思いますが、魂魄などに作用するタイプの漢方はほとんどの人はその効きめが感じられません。 そのため屠蘇の儀式化にはより意味があるのだと思います。年が新しくなるときに住まいや衣類もきれいにし、魂もリフレッシュさせるのです。
 ただし、シナモンはお菓子でも良く使われるスパイスで体に合わなくなっている人は珍しくはありません。残念ですがその方はシナモン水はもちろん屠蘇散で作ったおとそも飲まない方がよろしいかと思います。

2011年 目次

inserted by FC2 system