NOTE 2012-2

2012年7月

ブタの排泄物 2012/7/5

 随分前から、ホイップクリームやこしあんを食べて、口蓋(口の中の上の部分)がくすぐったくなると、なんともいえない苦痛が脳全体に広がるのです。 患者さんの中にはアイシャドウを塗ると同じ様な症状が起きるという方がいらっしゃいました。 知覚過敏の仲間に入ると思われます。 このようになった原因はあるアルコール飲料がきっかけなのですが、原因となる脳の部分の気滞(氣の滞り)の種類が全くつかめませんでした。 感染でもなく、食品毒でもなく、傷の反応でもありません。 長い時間がかかってこれがCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)と関係していることが分りました。

ブタの親子

 CGRPというのは三叉神経末端より分泌される物質で血管拡張作用があり、偏頭痛を引き起こすと考えられているものです。 私の症状の場合片頭痛のような痛みは無いので、単純にCGRPが刺激で分泌されて起こることではないように思われます。

 最近、偶然患者さんの脳・腹膜・卵巣にもCGRPと関係した気滞を発見しました。 話はややこしいのですが、動物プラセンタエキスに含まれていると思われる【アラントイン】の反応です。

プラセンタエキス  人間と人間に近い霊長類はプリン体を尿酸に変えて排泄します。 それ以外の牛・馬・ブタなどの動物は尿酸をさらにアラントインに変えて排泄するので痛風にはならないのだそうです。 アラントインという名前は、牛の羊膜(アラントイス)の分泌液から初めて発見されたことから付けられました。 たぶん動物プラセンタエキスにも含まれていることが推測されます。
 アラントインは肘や踵の角質を滑らかにする作用があり、ボディミルクやハンドクリームに使われています。 これらが体に害を与えている様子はなく、植物由来のアラントインが安全であることが分ります。

 人間も尿酸をアラントインに変える機能をいまだに持っていたなら、痛風という病気を知らずに済んでいました。 だけれども、研究者のある説では、脳を進化させるために尿酸が必要で、そのためアラントインに変換する酵素を作れない様にしたということです。 脳の進化のために統合失調症のリスクが発生した説と似たようなお話です。

プリオンの侵略 2012/7/12

 7月からレバ刺しが食べられなくなりました。 医療従事者としては生、特に内臓部分を食すのは危険なことだと理解しているので、今回の規制は仕方がないと思っていますが、 一般のレバ刺しファンにとっては残念なことだと思います。

 中国やインドの言い伝えで「弱った所を治すには、同じ部分を食べれば良い」という話があります。 多くはレバーのことを言っている様ですが、鉄を補う働きは有っても肝臓を元気にすることは有りません。
 動物の臓物も掃除をして加熱すれば、多くは問題なく食べることができますが、私は内臓ものは食べません。 人にもよるのですが、動物の内臓は脳の氣の流れを悪くするからです。内臓は第2の脳といわれる理由と関係しているのかもしれません。

 加熱しても危険なものとして狂牛病があります。 患者さんを診ていてプリオンに関係した気滞(氣の滞り)を見かけることはよく有ります。 これらのほとんどはからだの痛みの部分にあって、狂牛病と違い、食べてから数週間で現われます。 多くはハンバーグやつくねなど、様々な部位が混ざっている可能性があるものとテールスープです。 これを放置することは健康に良くはありませんが、広がっていっていく様子も無く、数十年後にヤコブ病(ヒトのプリオン病)になるということではなさそうです。
 羊のプリオン病(スクレイピー)は人間には移らないとされており、実際羊の気滞を見つけたことはありません。 豚もありません。しかし、牛はよく見かけますし、ヤギ・馬・鶏の気滞は時々見かけます。

薬膳/プリオン
メープル+マーガリン

 プリオンが多く蓄積している部分は脳・脊髄と小腸です。プリオン病が発症するには、ある程度まとまった量の摂取が必要です。 SF小説のように、自分以外の意識の進入が、あるレベルを越えると脳が乗っ取られてしまう感じです。
 アメリカの言い分では2歳以下の牛では高感度の検査をしても異常プリオンの蓄積は検出されないので安全ということです。 それで良いのだろうとは思いますが、問題はプリオン病の潜伏期間が長いと40年もあると言われている事です。 輸入が制限される前の牛肉が原因で、数十年後に発症する人がわずかであっても存在するはずです。 いったん発病するとあっという間に死に至ります。
 牛肉のプリオンに関係する気滞に限るのですが、メープルシロップとマーガリンの組み合わせが多少効果的と思います。 マーガリンは家庭用のマーガリンではダメです。種類が違います。

ハーブティとハトムギ茶 2012/7/19

 以前、老化物質としてAGE(終末糖化産物)が話題になりました。 老化と糖が関係しているのは間違いないところですが、患者さんを診ていてAGEに関係する気滞(氣の滞り)が見つからないので、老化の直接の原因にはならないのだろうなと感じていました。
 そうして先月、老化に『 C1q 』という免疫系たんぱく質が関与しているという研究結果が発表されました。
 今回は自分の体でも患者さんでも、骨や腱、顔のしみにしっかりとC1qに関係した気滞があります。体内由来の『老化物質』ではこれが本命かもしれません。 ただし、C1qの反応ではなく異常なグルコース・トランスポーター4(GLUT4)の反応です。 血中にC1qが増加するのも高血糖と関係しているのかもしれません。

薬膳/C1q
老化物質対策

 気滞が見つかれば次は治療です。
 オーガニックのジャーマン・カモミールのハーブティーと一緒にセブンアイのチーズ蒸しケーキを食べます。 顔にはヨクイニンエキス入りのパックをします。

 ヨクイニン(薏苡仁)という生薬は、はと麦の種子から実皮を取り除いたものです。 民間療法では、はと麦茶はイボ取りや肌の老化防止に効果があると言われています。 実際に根気よく飲み続けると、化粧品のキレート剤などでできた小さなイボが消えたという話も有ります。 だからと言って漢方薬「薏苡仁湯」が肌に良いというわけではなさそうです。はと麦の皮の部分に効果的な成分があるのかもしれません。 ヨクイニンエキスの方は、はと麦茶以上に肌の老化防止効果が有りそうです。
 集中的に使ったほうが良いのですが、含まれている他の成分の副作用の問題もあるので1日2枚までにしておくのが良いと思います。

氣のバリアー 2012/7/26

 医療では下痢というのは簡単に止めるという選択をしません。 たとえば病原菌が食事と一緒に腸内に入ってきた場合、下痢を起こさせて速やかに危険なものを体外に出すという、重要な体の防御機能が働いている状態だからです。

 いまだに牛乳は健康に良いという事で飲むよう勧める人たちがいます。 牛乳でも母乳でも乳が体に良いというイメージは、赤ちゃんがそれだけで成長できる完全食品という考えからでしょう。

丹田  赤ちゃんは皆、乳糖を分解するラクターゼという酵素を作る力があります。 しかし、乳児期を過ぎるとラクターゼは段々作られなくなり、大人になれば乳を飲むと消化ができず下痢をするようになります。 これは人間だけでなく犬やネコでも有るそうです。 そして欧米人に多い、大人でもラクターゼを作ることができる遺伝子の方が、突然変異で派生したと考える説があります。
 大人になって母乳を飲むという行動が問題というよりも、乳そのものが人間には何らかの害があると考えたほうが自然です。

 赤ちゃんのうちは、経絡もありませんし丹田もありません。 乳児期を過ぎた2歳ごろから丹田ができ始めます。そしてその後徐々に複雑な『氣のシステム』が作られていきます。
 1つの受精卵から細胞が分化・増殖してひとりの個体を作ります。そのときはDNAが複製され全ての細胞に「自分印」がつけられます。 氣の場合も丹田で「自分印」の氣を作っているのではないかと推測しています。 その働きで自分以外の気をはね返したり、太極拳で敵を倒したりすることができるのかもしれません。 現実的な話でいうと、免疫による抵抗力にも自己以外の氣を区別する働きが使われていると思います。

 来院される患者さんを診ていると、半分ぐらいは丹田が感じられません。 丹田が形成されない、あるいは弱くなるということと牛乳が関係しているように思われます。
 牛乳は飲み続けると、乳糖を分解できる腸内細菌が増加するため下痢をすることが少なくなるようです。 牛乳が飲めるようになるということは、決してより健康になったということではありません。

2012年8月

私でありつづけること 2012/8/2

 私自身の最も古い記憶は、2歳ごろ玄関で泣いている場面です。 長期記憶は2歳ごろから発達するので、特に印象深いものが深く記憶されたのでしょう。 その時は家族が何を言っているのか理解できなかったのですが、言葉が分るようになってから、単に母親が玄関から庭先へ出ようとしていただけの話と分りました。 要するに、理解できない言葉を正確に記憶するということが2歳でもできるということです。 記憶には脳の機能以外のものが関わっているように思われます。

びわ
びわの葉

 胸部に膻中穴というツボがあります。この奥の胸部縦隔部分に『中丹田』が有ります。 中丹田は腹部の丹田と同様、物質以外の自己を形成するのに重要な役割をしているように思われます。
 中丹田は脳の中の記憶と関係する部位とつながりがあるのか、アルツハイマー病やパーキンソン病をわずらっている人では中丹田が異常な場合があります。 こういう時は精神活動の1つ「神(シン)」も傷んでいます。

 中丹田が異常の場合、多くは胸部縦隔にウイルスの感染と思われる気滞(氣の滞り)があります。 肺に潜むアデノウイルスとは違うものです。
 この縦隔部分の気滞にはビワの葉エキス入りのクリームが効果的だと思います。胸骨のあたりに塗ります。 あくまでも縦隔部分の氣の流れをよくするもので、脳の異常を改善する効果はありません。
 ビワの葉エキスは免疫力を高める作用があると思います。クリームにするとその作用は無くなりますが縦隔には良いようです。

 イモムシから蝶になったとき、生まれ変わったように昔の記憶はなくなるのでしょうか。 姿かたちは変わっても、自分自身であり続けている感覚は生きている限り大切なことです。

天目が見据えるもの 2012/8/9

 額中央の奥に天目(上丹田)があります。 天目と言えば超能力など神懸かり的な力を発揮する上で重要なところです。 一方普通の人間では無くても健康に生きてゆけるものです。 しかし、自己を形成する上では下丹田・中丹田同様、役割があると思われます。

 天目は下丹田・中丹田に遅れ学童期の中ごろに生じます。 「将来なりたいもの」を訊かれ「機関車トーマス」など、人間以外のものを言ったりはしない年頃です。

 東洋医学で「たましい」と言うと「魂(こん)」と「魄(はく)」の2つがあります。 天目の氣が無くなっている人は魂と魄のどれかが傷んだりして問題があります。 魂(こん)というのは起きている間は頭(たぶん大脳皮質)に居て、眠っている間は肝臓に収まります。 学生の頃は信じられませんでしたが、臨床をやっているとなるほどと思うことがあります。

薬膳/とうもろこし
茹でとうもろこし

 ある患者さん、質問をしても反応が遅くぼんやりしているような感じです。 頭部に特別問題はなさそうなのですが、魂がありません。昼間も肝臓に入ったままです。 もちろん治療して天目の氣も感じられるようになったのですが、何年もこの状態だったので魂がしっかり働くまでには時間がかかると思います。
 逆に夜も肝臓に魂が入れない方がいます。こういう場合は天目が消えてしまうことはありませんが、深い睡眠がとれず嫌な夢を見ることが多いといわれていました。 夢をよくみる人は肝に問題があると東洋医学ではいいますが、魂が収まらないこともその原因のひとつでしょう。

 天目の氣は、今生の役割を理解する上で重要なものだと思います。 とうもろこしは、天目の氣を強くしてくれます。ヒゲはとって、皮は1枚だけ付けて茹でます。 焼きとうもろこしは逆に悪い作用があります。

威嚇の氣 2012/8/16

 美容鍼でポイントとなる部位は顎の部分です。 ここには美容上重要な「氣」があって、その氣を邪魔するもの(氣の滞り)を取り除くことが大切です。

威嚇猫  犬や猫が相手を威嚇するときに活躍する氣は、普段は顎の部分にあります。 威嚇するときはその気が顔に広がって、背中を通りしっぽの先に移動します。 人間の場合も威嚇の氣があるのですが、格闘技を見ていても全く動物のような働きがなく、退化してしまっているようです。 では、要らないのかと言うとそうでもありません。この氣は『顔面』の皮膚・筋肉・神経・血管・リンパなど、全ての組織の健康に役立っているようなのです。

 面白いことに、この氣は国によって強さが違うようです。 日本人の子供はかなり弱く、英語圏の子供は最も強く感じます。 日本人には欧米人の顔がなんとなく恐く見えるのは、やはり威嚇顔だったからなのでしょうか。

薬膳/美容
美容食

 この威嚇の氣は健康に過ごしても、老年期には消えてしまいますが、実際は10代~30代の間でほとんどの人は働かなくなっています。 その原因となるものは食べ物による毒です。ヨーグルト・ビール酵母・野菜ジュース・ピーナッツ・カレールーなど色々です。
 一人ひとりの原因は異なっても、ほとんどの大人は本来の顔よりも老けているということになります。
 現代では美容に必要な顎の部分の氣を強くするには、「チリトマトヌードルライト」とファミマの「トマトとチーズクリームの蒸しドーナツ」の組み合わせです。 これはけっこう良い感じです。

スパイスミックス 2012/8/23

 シナモンを例にすると分るように、生薬と香辛料は、薬に使われるか料理に使われるかというだけで同じ様なものです。

 香辛料はいくつかを組み合わせて使うと、味や香りに深みが生まれるので、より簡単に使えるように調合済みの香辛料という物も沢山あります。 たとえば、カレー粉は簡単にインド料理が作れるようにとイギリス人が考えた混合香辛料ですし、チリパウダーは簡単にメキシコ料理が作れるようにとアメリカ人が考えた混合香辛料です。

 漢方薬が生薬の組み合わせであるように、混合香辛料はそれだけで薬膳になってしまうこともあるのです。 ただ、混合香辛料は漢方薬のように配合が決まっているわけではないので、効果が商品によって異なることがあります。 また、最も問題なのは、すりつぶして混ざり合っていることで酸化したり悪い効能が生まれたりすることです。

薬膳/ダイエット
チリパウダー炒め

 そういう問題があるにしても、簡単に料理を薬膳に変えるスパイスを使わない手はありません。 そこで、私がかってに決めた世界三大スパイスミックスは【五香粉】【ガラムマサラ】【チリパウダー】です。

 効能はそれぞれちがうと思いますが、3つとも代謝を高めるのでダイエットに良いと思います。 中でもチリパウダーは魚肉ソーセージとししとうの炒め物に使うと中年太りに効果的です。 見た目ほど辛くは無いので、多めに使っても大丈夫です。

夏ばて 2012/8/30

 夏ばての症状のうち倦怠感は夏の終わりにより強くなります。 夏ばての原因として自律神経の疲労や目から入る紫外線などが挙げられています。
 自律神経は問題外として、紫外線と限らず強い光は脳の疲労物質FFを増加させると思われます。 また、FFを減らすには睡眠が必要であるため、寝苦しい夏には当然増加するはずです。 しかし、この場合の気滞(氣の滞り)は脳の中心部にあるのに対し、夏の終わりから秋の夏ばては前頭葉に気滞があります。 やはり、FFだけでなく、軽い熱中症の持続が脳を弱らせていることが夏ばての特徴だと思います。

 夏ばてに使われる漢方薬に『清暑益気湯』と言うものがあります。 金元時代の名医、李東垣(りとうえん)による処方では炙甘草など15種類の生薬が使われています。 その後簡略され、現在一般的なのは9種類の生薬によるものです。 効果については李東垣による処方のほうが高いと思います。

 暑さに負けないよう注意を払ってきましたが、このごろは少しばて気味です。 そこで、李東垣の「清暑益気湯」を薬膳に変換することにしました。 薬膳を考えるとき、漢方薬から変換するということはめったにやりません。ややこしいだけでほとんど成功しないからです。 ですが、今回は珍しく成功しました。材料も3個と超簡単なスープカレーです。

薬膳/夏ばて
薬膳/夏ばて

 その材料はウインナーとカレールーとたまねぎです。「清暑益気湯」とは似ても似つかない材料ですがこれでいいのです。
 カレーを作る場合、カレー粉を使ったほうが健康的なのですが、今回はこのルーでないといけません。 カレールーは油分が混ざっているので売られている商品の1/3程はおすすめできない品物です。 見分け方としては、良くないものは胸焼けのような症状が出ることがあるので、次回からは購入しないことです。

 ウインナーは一見体に良くなさそうな感じですが、私の薬膳では良く使う材料です。 意外にも添加物が良い仕事をしてくれているようです。 今回うまく行ったのは「清暑益気湯」の15種のうちの3種の生薬の組み合わせが「石膏」に置き換えられることが分ったからです。 石膏(硫酸カルシウム)は鉱物でありながられっきとした生薬で、喉の渇きなどの症状があるときに使われたりします。 食品売場で石膏と同じ反応のものを探してヒットしたのがウインナーでした。 何故ウインナーなのかと思いましたが、添加物の亜硫酸ナトリウムが肉と反応して必要な成分が生成されているのかもしれません。

2012年9月

天使の輪 2012/9/6

 氣にも色々ありますが、入学して最初の頃に教わるのは、原気(元気)、衛気(えき)、宗気、営気の4つです。 人間の気の素となるものです。原気は両親からもらうもので、全ての細胞にある先天の気です。 宗気は主に呼吸から得られる気です。営気は主に飲食で得られる気です。 これら3つに比べ衛気はちょっと個性的です。

 衛気は飲食から得られる皮膚のあたりを流れる気で、昼は皮膚の外側にあり、夜は皮膚の中に移動するといわれています。 経験的には、皮膚といっても外胚葉の部分なので、目や脳は含まれますが真皮は含まれません。 皮膚の外にあるときはオーラとしての性質で、皮膚にあるときは気の性質です。 オーラも広い意味では気なのですが、私には見えないので皮膚にあるときのほうが捉えやすくなります。 実際には昼夜は関係なく光が少ない部屋で眠っているときに体に入るようで、蛍光灯をつけている治療中では、患者さんの体内で衛気を感じることはありません。

 衛気の働きは邪気から体を守ったり、毛穴や汗腺から汗が必要以上にもれないようにしているといわれています。 この邪気から守るというのは多分オーラの状態のときだと思います。 格闘技としての太極拳の試合では衛気のオーラは体の前面に盾のように現われるようです。
 一方、体の中に入った状態ではこれといった仕事をしているような感じは受けません。 つまり、邪気といっても病原微生物は対象としていないのです。 この大したことが無さそうな衛気は本当は何のために存在するのでしょうか。

  受精卵のときからその中に衛気の反応があります。 勾玉のような状態のときは、その表面と頭の部分に反応があります。 妊娠も中期に入ると衛気に包まれた特別な気は頭の上のほうに移動し、出生時にはちょうど天使の輪のところにあります。 核となっている気は誰にも見えませんが、その周りの衛気の部分がドーナツ状に見える人がいるのかもしれません。

 この頭上の衛気がものすごく強い人がいました。それはサイババさんです。 手から物や粉を出す物質化現象で有名な方です。
 衛気というのは物質や生命の形成を助ける働きがあるのかもしれません。

 この衛気を強くして活用できたら若返りや再生に使えるのではないかと、あれやこれや試してみましたがどうもダメなようです。 母乳を消化できなくなるように、発達の過程で捨てた機能を拾おうとしても良いことは無いようです。
 足の内側に然谷というツボがあります。ここにせんねん灸などをすると、オーラの衛気に刺激を与えて、邪気(果物が原因の毒など)を排出する力が高まるようです。 買ったけど使ってないお灸が眠っていましたら、やってみてください。

意外な組み合わせ 2012/9/13

 セイタカアワダチソウは外来種で、明治に日本に持ち込まれ戦後全国に広まっていきました。 空き地一面にセイタカアワダチソウの黄色い花が咲いているということも珍しくはないくらい良く見かけます。 これだけ広がった原因のひとつは、根の部分から他の草が生えないようにする物質を出しているからだそうです。 しかしその一方で自分が撒いた毒が土壌に溜まって、自分自身をも生きて行きにくくしてしいるということもあるそうです。 だからと言って他の草が生えないかというとそうではなく、セイタカアワダチソウの毒に強いものにとっては関係ありません。

薬膳/ダイエット
生姜とさつま芋

 このように植物が自分の生育に有利になるように環境に働きかけるということは、野菜にもあるので連作をするときには注意が必要です。 たとえばさつま芋とショウガも相性が悪い。さつま芋の後にショウガを植えてもうまく生育しません。 要するにさつま芋が出す物質にショウガは弱いということになります。

 この相性の悪い二つですが料理で組み合わせると、意外な力を発揮します。原因、年齢を問わずダイエットに良いようです。 さつま芋を皮をむかずにさいの目切りにし、たっぷりのおろし生姜をまぶして20分置きます。 そのまま蒸しておやつに食べます。調味料、香辛料は加えないでください。
 さつま芋で変化した生姜の成分に効果があると思われます。

こむら返り 2012/9/20

 年齢が進むと夜中にこむら返りが起きやすくなります。
 こどもの頃、海水浴ではこむら返りが起きやすいので準備運動をさせられたと思います。 基本的にこむら返りは、冷刺激と足首を伸ばす動作で起きやすくなります。 朝方の冷えた時間に伸びをするとこむら返りが起きやすいので、布団の中で伸びをするときは踵のほうを伸ばすようにしている人も多いかと思います。

命門  東洋医学では高齢になると腎虚となり、足腰が弱くなります。 しかし、こむら返りについては肝が関係しているといわれています。 これは飲酒をよくする人が、夜中こむら返りを起しやすいということからいわれているのではないかと思います。 実際患者さんを診ていると、糖尿病や激しいスポーツなど特別なことを抜かして、頻繁にこむら返りを起すのは、腎虚いわゆる老化が原因と思われます。

 東洋医学では『命門』という生命活動には欠かせない重要なものがあると考えられています。 命門は三焦や心包と同様どこにあるのかははっきりしていません。右の腎臓であるとか左右の腎臓の間であるとかいう説があります。 私としては単純に『命門穴』の奥に特定の臓腑に属せずに存在すると考えています。更にそのお腹側には丹田があります。

リップバーム

 腎臓の先天の気が腰部の奥の命門に貯められ、そこから下半身に気が送り込まれているようです。 高齢による慢性腰痛やこむら返りが多い方を見ていると、命門に気が貯められていてもそれを配ることができない様子です。 命門の気と命門穴は関係していますが、ここに鍼をしても効果はありません。鍼をするならやっぱり腎兪穴になります。

 老化によるこむら返りの予防にカーメックスのリップバームを足の陥谷穴に塗ってください。 命門が腰下肢に気を送るのを助けてくれるはずです。それでも夜中にこむら返りが起こったら、すぐに立ち上がって起立姿勢を取って下さい。 短時間で回復します。

誰をも素直にさせる精のはたらき 2012/9/27

 東洋医学では「精神」という言葉に使われている神(しん)は意識と関係があります。 重篤な患者が助かるかどうかを目に神(しん)があるかどうかで判断していたと言われています。 一方、精(せい)のほうは無意識との関係が深いと思わせるところがあります。

 『氣』の前段階が『精』です。
 胎児のうちに腎精が、先天の気である腎気に変わります。出生の時点で精があるのは前頭葉の一部と小脳と皮膚(神経の末端)だけです。 1歳の頃にはそれも気に変わってしまいます。 後天の気は食事から得られますが、植物や動物の気がそのまま人の体に留まると邪気となるため、胃腸で消化・吸収する間に、それを精に変えて更に人の気にして脾に送っているようです。

 成人で『精』が一定時間現われているのは、催眠術に掛けられている人だけです。部位は新生児のときと同じです。 なぜかその部位の気は大人でも精に戻りやすいようです。
 催眠術に掛けられていると、非常に素直に術者の言う通りに振舞ったり、心の内を話したりします。 どうやら精というのは無意識領域と直接アクセスできるようにしているようです。
 そう考えると、乳児期に精が一部残っているのも、胎教が大事と言われることも納得できることです。 無意識がどう育つかということは、その子のその後の感性や人格に大きく影響すると思われます。

 皮膚が荒れていたり弱くなっていたりすると、神経の末端が表皮内まで伸びるため刺激に過敏になってしまいます。 若いうちは原因が解消されると治っていきますが、年齢が進むと原因が消えてもいつまでも症状が残る場合があります。 こういう場合、肌の氣虚(氣の不足)と小脳の氣実(氣の過剰)が生じていることが多いようです。 西洋医学的には小脳と皮膚の感覚器は関連がないのでしょうが、東洋医学では意外なところが連携しているということは珍しくはありません。
 肌の知覚過敏だけでなく、坐骨神経痛などの慢性疼痛でも小脳の氣実があります。神経の機能を高めようとしての結果だと思われます。

 東洋医学では気が不足しているところに補うのを「補法」といい、気が過剰なところから洩らしたり散らしたりするのを「瀉法」といいます。 瀉法は患者さんの体力が落ちる可能性があるので沢山は行いません。 では、足りているところから足りないところへ移動させれば良いと思われるかもしれませんが、そんな簡単にはいかないのです。
 テイ鍼を使った鍼灸治療の場合、催眠と全く違う方法で精に戻したあと、氣虚へ誘導することもある程度は可能です。 もちろん一部の症状に限られますが、副作用の無い瀉法です。

 心の中で「心配ないさ」と呟くと、一瞬だけ前頭葉は生まれたときの『精』に戻ります。

2012年10月

玄米の使い道 2012/10/4

 日本人なら誰もが緑茶には健康に良いイメージを持っていると思います。 しかし、実際は体の深いところを傷つけている反応があります。 その原因となっているのは、緑茶のカテキンと思われます。

 カテキンの優れた効能として抗酸化作用、抗がん作用、ダイエット効果などがありますが、純粋に健康に役立つのは、その中でもダイエット効果だと思います。
 カテキンは、脂肪とコレステロールの吸収を抑える働きをします。 緑茶よりも優れた吸収阻害力を持つ食材は他にもありますが、毎食後簡単に摂取できるという点でベストな選択かも知れません。

緑茶

 緑茶に抗がん作用があるのは明らかなようですが、その機序についてはいくつかの考え方があるようです。 そのひとつに、緑茶が発がんやがん転移を抑制するのは、カテキンが遺伝子に働きかけてTNF-αの出現を抑制するからというのがあります。 TNF-αは近年様々な健康障害を引き起こすことが分ってきましたが、元は免疫の重要な物質であってTNF-αが減少することが必ずしも良いとはいえません。

 患者さんを診ていると、気になる緑茶の反応部位は延髄、肺、心臓周囲(心嚢)です。 延髄に緑茶の反応がある人は自律神経失調気味の人です。 肺に反応がある人は『肺の気』が減っています。そうすると『憂い』という感情が生じやすくなるので、くよくよしやすい性格のひとが多いようです。 心臓周囲に反応があると自覚症状がないまま心機能が低下し、過労死のリスクが高くなります。 総体的に見ると、日本人らしい性格や体質は緑茶によって形成されているのではないかとさえ思えてきます。

 そういう理由で緑茶は飲みませんが、玄米茶になるとダイエット効果を残しつつ体への害がなくなります。 玄米も健康なイメージがあっても、実はそうではないグループです。意外なところで役に立っています。

助け合う経絡 2012/10/11

 鍼灸治療で最も良く使われる専門用語は「経脈(ケイミャク)」と「経穴(ケイケツ)」でしょう。 経穴は経脈にあるツボのことですが、実は、経穴よりも先に経脈が発見されたと言われています。 経脈は「氣の通り道」と説明されることが多いのですが、「気の川」の方がよりイメージとして近いと思います。

 山から染み出た水は少しずつ合わさり川となって海に出ます。経脈の気も手足の指先から体の外に出て行きます。 海の水が蒸発し雲を作り雨となって再び地面に降り注ぎます。身体から出て行った気は浄化され再び別の指から自分の身体に入ってきます。 雲が宇宙に消えて行ったりしないように、経脈の気もよその人の所へ行ったりはしません。 地球に水が無くなれば人は生きてはいけないように、経脈の気が無くなれば生きてはいけないかもしれません。

 経脈には「手の太陰肺経」「手の陽明大腸経」のように、それぞれ臓腑の名前が付いています。 そして2つずつペアを組んで助け合っている関係があります。これを「属絡関係」と言います。 特に【肺と大腸】【心臓と小腸】【督脈と任脈】は属絡関係にある相手を元気にしないと改善しません。

 花粉症は主に呼吸器に症状がある免疫系の疾患なので東洋医学的には肺の病ということになりますが、 肺よりも属絡関係にある大腸の気を元気にしないと良くはなりません。 一般的には大腸経のツボを刺激するのでしょうが、それよりも申脈穴(外踝の下)に棒灸をした方がずっと大腸の気が高まります。 棒灸は面倒だという人は「ボタニカルマジック リッチベールハンドバターシトラスジンジャー」を申脈穴に塗ってください。 棒灸より即効性があります。

塩の種類 2012/10/18

珠洲の塩

 有名な料理人になると塩にもたいへんこだわり、料理によって塩を替えているという話を聞きます。

 地元の能登半島には日本最古の塩作りの方法「揚げ浜式製塩法」と同じやり方で作っている塩があります。 体に良いという意味ではこの塩が日本一だと思います。
 でも、現在使っているのは「一番釜 のと珠洲塩」です。 こちらのほうは揚げ浜式ではなく流下式製塩法で作られていますが、同じくらい体にも良く、盛り塩にすると清める力も高いからです。
 塩は作られ方によって味が違えば、身体への影響も、清める力も全然違ってきます。 「奥能登揚げ浜塩」の方はなぜか場を清める力は弱いのです。
 一方、「能登半島 珠洲の結晶塩」は溶けにくいので飾り塩などに使われますが、清める目的でしたらこれが一番です。

 秦の始皇帝は、沢山いる女性の中でその日牛車の牛が止まったところの女性を訪ねることにしていたので、ある女性が自宅の前に牛が止まるよう塩を置いたと言う話があります。 時々お店の前に盛り塩がされているのを見ることがありますが、そういう人寄せの縁起担ぎとして置かれているようです。 お客も始皇帝と同じように扱われたら悪い気はしないのでしょうが、牛車の牛と思われていたとしたら気分を害する話です。
 本来盛り塩はお清めの目的で行われていたものであり、残念ながら人寄せの力はありません。

香りアレルギー 2012/10/25

 本来、アレルギーというのはたんぱく質に対する反応です。金属はたんぱく質ではありませんがアレルギーを起こす原因になっています。 これは体のタンパク質と金属イオンが結合し、本来ないタンパク質に変化して、それに免疫細胞が過剰に反応してアレルギーを起こしています。 つまり、あらゆる物質はアレルギーを起こす原因となりうるのです。

 若い頃、香水を付けると下痢をするということに気が付きました。外出先でおなかが痛くなるので、それ以来香水やコロンなどは付けなくなりました。 その当時は多少香りに敏感なのかと思っていましたが、今考えればアレルギーだったようです。
 香りアレルギーの原因となるものは、消臭剤や生花、エッセンシャルオイル、化粧品など様々です。  症状は成分によって違いがあります。 職場の洗浄剤の臭いにアレルギーを起こしていた患者さんは、頭痛と倦怠感で仕事がまともにできない状態でした。

 香りアレルギーの対策には【ダマスクローズ・ボディミスト】が効果的です。 私の場合は下痢だったのでお腹に付けていました。頭痛の場合は頭部につけても大丈夫です。 ただし、ガムやキャンディなどの食料品の香りアレルギーについては効果がありません。

2012年11月

妊娠準備 2012/11/1

 女性は問題を解決する際、論理的思考より情動的に対処する傾向にあります。 また女性はホルモンの影響を受けて感情的になったりすることから「女性は子宮でものを考える」と言われたりします。
 産婦人科の医師は「子宮はホルモンを分泌していないので、女性は卵巣でものを考えるという表現が適切だ」といいます。 確かに卵巣から分泌される女性ホルモンは視床下部にフィードバックされるので、卵巣と脳はホルモンで連絡しあっているといえます。 しかし、視床下部と気で連絡しあっているのは子宮かもしれません。

 代表的な頭痛は3つのグループに分かれます。①緊張性頭痛、②片頭痛、③群発性頭痛です。 東洋医学の病名では①太陽経頭痛、②少陽経頭痛、③陽明経頭痛となります。 それぞれが通っている①足の太陽膀胱経、②足の少陽胆経、③足の陽明胃経を、てい鍼で刺激すると効果があります。

 群発性頭痛というのは目の奥やこめかみに激しい痛みが起きる頭痛です。 こめかみ部位の頭痛があるときには、視床下部の血流が低下していたという検査結果があるそうです。 群発性頭痛というのは、男性に多く女性に少ない病気です。女性には群発性頭痛を抑える何かがあるのかもしれません。

  群発性頭痛を発症した女性の患者さんを診ていると、子宮の気虚あるいは胃の気虚の状態の方です。 子宮や卵巣は『衝脈』を通じて胃と非常に固いチームを作っています。 このうち卵巣が気虚となっても群発性頭痛は起きないようなので、子宮の気が直接、視床下部を刺激しているのではないかと推測しています。 また、胃の気虚になると衝脈を通じて子宮の気の働きを押さえ込んでいるのではないかと思います。

 『衝脈』というのは妊娠にとって重要な経脈です。 この経絡の通りが悪いと百会の上にある衛気が入って来れないので、妊娠がしずらくなります。
 衝脈が多少流れが悪くてもピアスをしていると衛気が子宮に入るのを助けてくれます。 ピアスは健康に良くないと思われているかもしれませんが、衛生的に管理すれば、時には良いツボにもなります。

並んで座る 2012/11/8

 身体が健康であるためには、内臓と同様に経脈も正常でなければいけません。
 経脈はその臓腑から流れ出る川であり、臓腑を清めると同時に下流域の土地を豊にする役割があります。 その川がせき止められたり狭くなったりした場合、まず川の下流域が枯れてしまいます。

 内臓を治すときには経脈を使って治療を行いますが、このとき接触鍼やてい鍼はともかく毫鍼のように刺す鍼は経脈を傷つけてしまいます。 この傷ついた経脈を自分の自然治癒力で治せるのはアスリートや肉体労働をしている人だけです。
 刺激の強い鍼は肉体労働をしている人には良いが、都会のひ弱なサラリーマンには向いていないと言われています。 経済成長が著しい中国でもこの頃は、日本のような浅いやさしい鍼が増えてきているという話です。

 都会暮らしのサラリーマンが自然の力で経絡を健康にするには、異性のすぐ隣に座ることです。 そのことによってお腹の中脘というところの営気の治癒力が高まるようです。 同性では陰陽の対にならないので変化は生まれません。

 中脘は、手足の経絡24本の始まりです。 この中脘に鍼を近づけただけでも脈が変化してしまうといいます。 もちろん鍼を近づけても経絡を治すことはできませんが、それだけ全体に影響を及ぼす部位だということが言えます。

やさしい攻撃 2012/11/15

 過敏性腸症候群(IBS)というのは、炎症や潰瘍などの器質的な原因が見つからない下痢や便秘を繰り返す病気です。 原因は明らかにはなっていませんが、多くは精神的ストレスが関与しており、一部はたぶん判りにくいアレルギーが関係していると思っています。
 ストレスが原因といわれる病気には、西洋医学で解明できるものと、西洋医学では本質はつかみきれない氣の病とに分かれると思います。 過敏性腸症候群は後者に入るのではないかと考えています。

 東洋医学では病気の原因となるものを邪と呼びますが、そのうち暑邪、湿邪、寒邪などのように気候に関するものを外因といい、自分の心のあり方を内因といいます。 情動は、それぞれ特定の臓腑の氣を邪気に変えてしまいます。 この特定の情動とからだとの関係が科学では解明できない部分だと思います。
 五行のうち土に配属される胃と脾の氣は、取るに足らないような些細なことでクヨクヨしていると病んでしまうようです。

 過敏性腸症候群の便秘では腸の動きが悪くなり、ころころウンチになります。 この蠕動運動の低下には、体内麻薬であるエンドルフィンが関係しているという説があります。 程度は違いますが、癌の患者さんの痛み止めに麻薬を使うと重度の便秘になることと同じ機序です。 腸で多くのエンドルフィンが作られると、腸の動きを悪くすると同時に、胆汁の出口のオッディ括約筋も締まってしまいます。 胆汁は、胃で酸性となった食物残渣を弱アルカリにする役割もあるため、胆汁が出にくくなると下痢や便秘の原因になります。

過敏性腸症候群  胃の氣が邪となったことで、すぐに胃の腑に異常を生じさせるわけではないようです。
 五行論では、木→火→土→金→水の順で力が循ると考えられています。これを【相生】といいます。 これはお互いが助け合うという機能と同時に、お互いの異常をチェックしあうという働きもあると思われます。
 胃の氣をもらった大腸の氣が異常を感じて、何らかの対処を講じようとします。しかし、氣を送ってくれている親のほうを攻撃することはできません。 そうすると双方と直接関係のない胆を刺激します。 この二つ先を攻撃することを【相剋】といいます。大腸(金)にとっては胆(木)は胃(土)を剋してくれる立場にあります。
 自分の身体の中で攻撃しあうというのはおかしい様に思えますが、お隣さんが変だなと思っても直接は言えないところを遠まわしに気づいてもらえるようにしているのかもしれません。

 東洋医学では過敏性腸症候群を脾、肝、胃などの病とみなす人が多いようですが、私はストレスによって胃の氣が邪に変わったことによる胆の病だと解釈しています。
 内因による病は、患者さんが自分の心のあり方を見直して、邪気を正気(せいき)に戻すことが何よりも重要です。 その一方で治療家は剋された臓腑が正常に戻れるよう漢方薬投与や施術をするのが良いと思います。

胸キュン 2012/11/22

 古典によると経脈を流れる営気は1日に50周するとあります。 そのときのルートは肺経から始まり肝経で終わる手と足の経脈12種類×2(左右)=24本と 奇経の内の督脈・任脈・陽蹻脈・陰蹻脈を合わせた計28本となっています。
 手と足の経脈24本でひとつの輪を作ります。督脈と任脈もこの2つで輪を作っています。 陽蹻脈と陰蹻脈は私が見たところ生殖機能が衰えた頃に出現し、それぞれで輪を作っているようです。

 当院ではてい鍼という刺さない鍼を使うため、お子様の患者さんも多くいらっしゃいます。 ある日、小学生の男の子の治療中、肝経が胸部を通らずに、腹部の肺経の始まりにそのままつながっていることに気が付きました。 それをきかっけに他の人の経脈のルートも確認してみると、どうやら第二次成長期のあたりに肝経は胸部に入ることが分かりました。

 肝経は足の親指から始まり、生殖器を循ったあと腹部に入ります。 本来ひとつの枝は横隔膜を貫いて側胸部に散布し、のど、目を通って頭のてっぺん(百会)まで登り、督脈につながります。  もうひとつの枝は横隔膜を貫き、肺を通って再び腹部に戻り肺経につながります。

 多くの人は思春期のころ、胸がキュンとしたという思い出があるはずです。 心臓のドキドキとは違うので、私はずっとその場所は胸腺だと思ってきました。 胸腺は最も早く老化していく臓器です。そのため大人には胸キュンは起こらないのだと信じてきました。 しかし、もしかしたら胸キュンは、肝経が新しい胸のルートを作るときの感覚だったのかも知れません。 だとしたら、肝経は左右1本ずつなので、その瞬間は人生でわずか2回きりとなります。

かぶら寿司 2012/11/29

 忘年会シーズンとなりました。こういう冬の宴会では鍋が定番です。 美容に良いとして、ときにコラーゲン玉が入るときがあります。 非常に魅力的ですが、どんな材料から作られているかわかりませんので用心しなければいけません。 食材の鶏や豚の質によってはアレルギーを起こす場合があるので要注意です。
 それに、食べたコラーゲンがそのまま肌のコラーゲンになるわけではないのです。消化されて再びコラーゲンを作るときの材料になるに過ぎません。 そのコラーゲンを作る自分の能力が老化してしまっていることにこそ原因があるのです。

 若い頃のように体内でコラーゲンを作るようになるには、真皮の線維芽細胞が健康であることが第一です。 その次に重要なことはビタミンC です。コラーゲンを作るためにはビタミンCが必要です。 しかし、ビタミンCというのは体内で作ることができません。そのため食事から取る必要があります。 しかも、ビタミンCは水溶性のため、すぐに体外に排出されるので毎日取る必要があるといわれています。

 多くの動物がビタミンCを体内で合成できるのに、なぜ人間は作れなくなったのか。 ひとつの説では果物や植物を多く食べるようになって、その機能が必要がなくなったというのがあります。 その説では、ビタミンCの代わりにより抗酸化作用の強い尿酸を溜めるようになったということです。 素人的にはビタミンCが本当に充分ならリスクを背負って尿酸を溜める必要がないように感じてしまいます。 やはり、脳の進化のために尿酸を溜める必要があり、その巻き添えになってまずビタミンCが生成できなくなったのではないでしょうか。

薬膳/美容
かぶら寿司

 果物や野菜を毎日摂らなくても、35歳ごろまでは肌も元気でシミもそうできません。 それには新陳代謝が盛んだからという事もあるとは思いますが、大腸の働きが大きく関係しているような気がします。
 体を作る年頃を過ぎて、30代半ばになると内臓全体は仕事量を減らし始めます。 大腸の氣や経脈の力がなくなって来ると、急に肌のたるみやシミが進行してしまいます。 それに拍車を掛けるのは腸の悪玉菌の増加など生活習慣の積み重ねです。
 具体的に大腸の氣がどのような仕事をしているかは分りませんが、美容にとってはビタミンCに引けをとらないほどの仕事をしているかもしれません。

 コラーゲン生成に必要と思われる大腸の氣を元気にする薬膳は「かぶら寿司」です。
 金沢には「かぶら寿司」「大根寿司」という郷土料理があります。 「かぶら寿司」は、かぶらにブリを挟み、「大根寿司」は大根ににしんを挟んで麹で漬け込んだものです。 最近は塩麹が流行っていますが、ヨーグルトと同じ様にからだの奥のほうを傷つけるので、患者さんには勧めたりはしません。 ですが、ブリと一緒になるとその悪影響は無くなってしまいます。そして、麹とかぶらの組み合わせは大腸の氣を元気にしてくれます。

 「かぶら寿司」は前田のお殿様や武家が食べたもので、商人がそれを真似て食べたものが「大根寿司」といわれています。 「大根寿司」の方が好きという人もいるのですが、美容と健康のためには「かぶら寿司」の方をお勧めします。

2012年12月

風邪(ふうじゃ) 2012/12/6

 東洋医学では病気の原因を内因と外因に分けます。 外因というのは気候に関わるもので、風・暑・湿・燥・寒・火の6つがあります。 このうち風邪(ふうじゃ)というものは、日本の風邪(かぜ)とは別物です。 実際中国ではかぜは風邪ではなく感冒です。

 まず、感冒というのは大きく分けると3つの原因に分けられるのではないかと思います。 まず1つは、寒さによって体内に潜んでいたウイルスが増殖した場合です。 これは最も単純な感冒で外因の中の寒邪(かんじゃ)に入ると思います。冷房による夏かぜもこれです。 その次は飲食物からのかぜウイルスの感染です。生ものからの感染が多いのですが、田舎ですと自家製の干し柿で感染する人を時々見かけます。 3番目は人からの感染です。特に感染力の強いものは流行性感冒(インフルエンザ)として区別されています。

 一方風邪(ふうじゃ)というのは特定の病気を指すというよりも、症状の性質や進行状況を表しているようです。 脳卒中の片麻痺や言語障害も風にあたって起きる症状と考えられ中風(ちゅうぶ/ちゅうふう)といわれました。 また、病気の進行が速く、変化が多いのも風の性質であり、主な感染症は燥邪・寒邪など他の邪と風邪(ふうじゃ)が合わさって引き起こしていると考えられていました。 要するに、風邪(ふうじゃ)は万病のもとなのです。

風門  このように「かぜ」と「ふうじゃ」は別物なのですが、患者さんを診ていると明らかに「ふうじゃ」による「かぜ」と思われる方もいます。
 扇風機に長時間あたるのは良くないと言われますが、それがわずかな時間でも苦痛に感じる方がいます。 風に過敏な人です。年中かぜを引いていて、体調が悪くなると胃の調子も悪くなり嘔吐しやすくなります。 この方の場合、胃経が下肢に行かず膀胱を経由して首の後ろの風門穴を通り上肢に進入しています。

 風にあたると気化熱が奪われるので、交感神経が働き血管の収縮や立毛が起きます。 胃経が風門穴を通ることで、その奥にある交感神経節の働きを狂わせているのかもしれません。
 風門穴は風邪(ふうじゃ)が進入する門戸といわれています。この門戸が壊されると風邪(ふうじゃ)はいつでも入ってこられる状態になります。

 のどや気管の血行を良くして風邪(ふうじゃ)を追い出すには、風門穴辺りと前胸部を温めます。 電子レンジで温めて繰り返し使える商品もありますが、 電子レンジで蒸しタオルを作ってビニール袋に入れて当てたほうが簡単で効果があります。

紫煙と海雲(もずく) 2012/12/13

 痛風と人類の歴史は古く、欧州では紀元前よりあったといわれています。 一方、日本には明治以前まで痛風の患者はいなかったという記録があり、痛風の発症に生活習慣が深く関係していると推測されています。

薬膳/高尿酸血症
能登舳倉島産もずく

 痛風は体内の尿酸が過剰になって起こります。尿酸はプリン体から作られるため、プリン体の多い食材は控えるようにと言われたりします。 しかし、プリン体は全ての細胞に存在するのでどの食材というよりも過食をしないということの方が大切です。 それに、プリン体はデノボ回路で糖やアミノ酸からも産生されるのでやはり食べすぎは良くありません。
 ところが高尿酸血症の患者さんを診ていると、けっして肥満の方ばかりではないことから、原因が過食という事でもなさそうです。 高尿酸血症は尿酸の代謝異常と言われますが、このデノボ回路での異常産生があるのかもしれません。

 高尿酸血症の方は肝臓に原因と思われる気滞(気の滞り)があります。 その気滞は3つの種類に分かれます。1つは鶏肉+ひまわり油の組み合わせですが、少数派の人です。
 2つめはビールのホップが体に合わない人です。この方はプリン体がゼロのビールでも飲まないほうがいいのです。 しかし、漢方薬で尿酸値が下がりやすい人です。

 最後はタバコのニコチンに弱い体質の人です。ニコチンはアルコールの分解能と同じ様に個人差が大きいのです。 ニコチンに対し極端に弱い人は、副流煙を吸っただけで肝臓に気滞ができます。 こういうタイプは残念ながら漢方薬も効果的ではありません。 こういう方にお勧めの食材は「細もずく(糸もずく、本もずく)」です。治療というよりは予防として効果があると思います。 酢のものにすると効果は無くなるのでお味噌汁をお勧めします。

 もずくは細いもの(モズク科)と太いもの(ナガマツモ科)がありますが二つはまったく別の種類だそうです。 養殖の太いもずくは健康に役立つことはありませんが、日本海産の細もずくは良い食材です。 筋肉の凝りにも効果があります。この場合も、もずく酢では効果はなくなります。
 ナガマツモ科の新芽を細もずくあるいは糸もずくとして売っていることもあるので、産地などを良く見てから買って下さい。

インスタントな薬 2012/12/20

 糖尿病も痛風と同じく紀元前より存在した病気です。日本では平安時代の藤原道長が糖尿病を患っていたと考えられています。 いくら貴族で贅沢な食事をしていたとはいえ純和食ですし、彼の場合は飲酒の不摂生が病気を進行させたのかもしれません。

薬膳/糖尿病
小さなこうや

 糖尿病の原因には、①インスリンの分泌が悪いという事と、②インスリンの効きが悪いという事が挙げられます。 糖尿病の予防にコーヒーが良いと言われていますが、クロロゲン酸というコーヒーの芳香成分がこの②を改善すると考えられます。
 コーヒーの種類ではレギュラーコーヒーがベストなのでしょうがインスタントコーヒーでもそれほど差は無いようです。 糖尿病が発症してからは、食後にコーヒーを飲むとカフェインの作用で血糖値を高くすることがあるようですが、空腹時に飲む分には血糖値には影響は無いとのことでした。

 コーヒーを飲むと胃が痛くなるという人がいます。 胃も食物が一定時間ためられるところなので、毒素が多いところです。 コーヒーは解毒作用が強いため、毒素が多い人ほどコーヒーを飲むと胃が痛くなる傾向にあります。 この方々の中には本当にコーヒーが体に合っていない人もいます。 コーヒーを飲むと夜眠れなくなるという方は、明らかに体に合っていないので飲んではいけません。

 先日患者さんから糖尿病に菊芋が良いと教えてもらいました。 調べてみると膵臓に作用し、①に効果があることが分かりました。 菊芋による糖尿病治療を発見したのはエドガー・ケーシーです。 彼の話によると使ってよい調味料は塩と少しのバターだけです。また、茹でるとその茹で汁も飲まないといけないので、蒸すのがベストかと思います。 様々な健康食品に加工されて売られていますが、どれも効果はありません。

 実は残念なことに日本で採れる菊芋は効き目が非常に弱いのです。 そこで、アメリカの菊芋と同じ様な効果のある食材を探しました。 フリーズドライの油揚げです。あのインスタントの味噌汁やうどんに入っているやつです。 こんな物がと思われるかもしれませんが、実はたいていのフリーズドライの食材は体にいいのです。
 菊芋にしてもお揚げにしても一定の期間は継続しないと意味がありません。 乾燥お揚げの入ったカップうどんなら週2回×4ヶ月ぐらいでしょうか。 カップうどんはどうもという方には、旭松の【小さなこうや】も同じ様な効果がありますのでこちらをどうぞ。交互に使っても大丈夫です。

角膜 2012/12/27

 腎臓の気が若さを保つための力を他の臓器に分け与えているように、体のそれぞれの場所にもエネルギーの中心となる重要な場所があります。 目においてはそのエネルギーの中心は角膜のようです。

 角膜はそのまわりにある目を動かす筋肉や神経、眼圧と関係がある隅角のシュレム管にエネルギーを与えています。 皮膚が老化するように、角膜が老化するとそれらの組織は働きが悪くなってしまい、その結果、眼瞼の下垂や眼圧の上昇が起きることもあります。

薬膳/眼瞼下垂
じゃが+ペッパー

 角膜を元気にして眼瞼下垂を予防する食材はじゃが芋です。
 皮ごと電子レンジで加熱して、マヨネーズ、ブラックペッパー、ピンクペッパーをかけます。 皮は食べなくてもかまいません。
 目に良い食材にブルーベリーと鮭がありますが、ピンクペッパーはブルーベリーと効能は同じです。 ブラックペッパー+ピンクペッパー+じゃが芋は鮭と同じ効能です。 マヨネーズは隅角のために加えてあります。

 近視は働きの問題ではなく形状の問題があるので、仮性近視と違って治ったりはしないといわれてきました。 しかし近年はレーシック手術やオルソケラトロジーというコンタクトレンズを装着する治療によって治る病気になりました。 これらは安全な手技であったとしても、角膜の持つ気の力は低下してしまうと思われます。 大人になってからはそのような角膜の形状を変える手法しかないのでしょうが、小中学生の視力が落ち始めたばかりであれば、鍼灸治療でも回復の可能性はあります。

2012年後半 目次

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